⑤ポテンシャルを最大限に活かす「小川システム」の成果
東レのVCupは彼女のためにあったといっても過言ではないでしょう。あ、それはさすがに過言か(すみません、推しなので)。でも、最大の成果であることは皆さん納得していただけるのではないでしょうか。
元々ミドルブロッカーだった彼女ですが(上述のバレーボールマガジンによると、中三の時にアウトサイドヒッターを一度やったきりだそうです)、宇都宮大会ではアウトサイドヒッターが中田、野呂の二選手しかいない状態だった(西川選手は登録されていましたが、この試合では使わないつもりだったのでしょう)のでいわば苦肉の策(笑)として急造アウトサイドヒッター(オポジット)として起用した形です。確かに井上、大﨑両選手に比べればパワフルさという点でアウトサイドヒッターとしての適性はありますし、ミドルブロッカーとして伸び悩んでいた時はコンバートも…と個人的に思ったことも事実です。
苦肉の策だったということは逆に言えば小川選手を活かすためのシステムだった、ともいえるわけです。
このNEC戦で一定の成果を示したことから、日立戦ではオポジットとして起用されましたし(でもブロードを打つなどいわば二刀流でした)、所沢大会ではサーブで後ろに下がってもオポジットとしてローテーション一つだけ残るなど、VCupは完全に小川システムでした。
一言言わせてください。
楽しかった!!!!
それは本人が活躍したとか覚醒したとか、コートにいる時間が増えた!とか、バックアタックとかいい写真がたくさん撮れるようになった!!とかそういう単純なことではなくて、推している選手の持っているポテンシャルの大きさに気づかされ、かつそれを思いっきり見られた、ということだったかな。
それはもちろん本人のためにとってもいいことだったのでしょうが(もっとも本人はポテンシャルという言葉の意味すら分からないでしょうけど 笑)、何よりチームにとってもよかったんですよね。オプションが増えたんですよ。
東レはどうしても選手層が薄いです。そして劣勢の時に流れを変えられるいわゆるジョーカーがいません。厳密に言えば、昨シーズン(19/20)はレギュラーではなかった小川選手がジョーカーだったんですよ。
いや、ジョーカーがいればいいというスポーツでもないですよ。でも、流れを変える存在は確実に必要なわけです。でも、それって別に選手交代に限らないんだなというのは痛感しました。ポジション交代も一つのジョーカーなんだなと思いました。わかりやすく言うとジョーカーとしてミドルブロッカーの小川選手ではなくオポジットの小川選手を投入する、ということです。
もっとも小川選手だって今シーズン開幕時は昨季同様ファーストチョイスではなかったんですよね。でも、全てが変わったのは何度も書いてますが、11月の岡山大会のJT戦からです。あれで確変モードに入りましたね。そこで覚醒してリーグ戦を終えて、その覚醒モードのまま一気にポテンシャルが開花した。そう言い切れます(それなりに見ているので、これは、思いますとかではなく断言します)。でもあのJT戦の起用をおぜん立てしたのは越谷監督ですからね。
主力選手が抜けた中で、残った少ない選手のポテンシャルを引き出して結果的にチームを底上げしている、というところは越谷監督の功績だと思います。
あと小川選手が試合中に言う「(私に)持って来い」が、リーグ戦は「持って来ーい」だったのがVCupだと「持って来い!」と力強く、声も大きくなっていた印象です。オポジットのときは「美沙紀さん、前!」とか言っていてびっくり。頼もしくなりましたねえ…プレーだけでなく精神的にもステップアップしました。
そしていつか「パリ五輪で活躍した小川選手が一皮むけたのは、あのVCupだった」なんて言われる日が来るといいですね。