2020年3月2日、久光製薬スプリングスの運営事業を主にマネジメントする新会社、としてSAGA久光スプリングス株式会社が設立されました。
従来はチームの運営は親会社あるいはその関連会社、岡山や姫路のようなクラブチームはチーム自ら、というケースが基本ですので、親会社がマネジメント会社を設立するというのは異例だと思いました。一方で、これはいわゆる実業団方式のチームがクラブチームに移行…とまではいかなくても、両方の側面を取り入れる新たなモデルになる可能性もあるのではと思います。
ここでは、SAGA久光スプリングス株式会社が設立されてからの久光の動きと、さまざまな改革を、一つのプロジェクトとしてまとめてみます。
■チーム名およびマスコット変更
まずはSAGA久光スプリングス株式会社についてです。設立を伝えるサイトにはこうあります。
バレーボールその他各種スポーツ競技チームの運営などが、自立した組織によって行われていくこととなる。
引用元:「SAGA久光スプリングス株式会社」 が佐賀に設立(月バレ.com)
つまりは、チーム運営を親会社である久光製薬株式会社からわざわざ切り出した、ということなのでしょう。またこのときは7月のチーム名の変更、そして将来的には神戸・鳥栖のダブルホームタウンから鳥栖に一本化するという発表もありました。
その後の動きをまとめると、チーム名は7月に「久光製薬スプリングス」から製薬がなくなって「久光スプリングス」になり、あわせてマスコットのハルちゃんも変わりました。
チーム名変更についてはいっそ久光の名前すら入らず「佐賀スプリングス」や「鳥栖スプリングス」になるのではとも思っていたので意外ではありました。会社名にはSAGAの文字が入っていたので。でもそこまでしなかったのは、久光としてはチームは何らかの形で保有し続けるということなのでしょう。
そしてマスコット変更は、簡単に言えば人が入りやすくな…おっと、そうではなく、動きやすかったり、より擬人化するためのものなのでしょう。NECレッドロケッツのルナちゃんとかトヨタ車体クインシーズのクインちゃんとかいい例ですよね。彼女たちは中に人が入れ…おっと、会場にいたり演出に参加できる存在になってますからね。
■鳥栖市に新練習拠点新設へ
また、12月には新練習拠点として、サッカーJ1のサガン鳥栖の本拠地・駅前不動産スタジアムに隣接する駐車場の一部の貸与を求める要望書を鳥栖市に提出しました。
2021年3月にはその新練習拠点のコンセプトを発表しています。資料を見ると、練習拠点でありながらメインアリーナはそこそこ大人数の観客を収容できる仕様になっています(見た感じは滋賀のYMITくらい)。
またバレーボールだけでなくバスケもできるサブアリーナ、そしてクラブハウス、トレーニングルームなども併設されます。ということは選手たちも必然的にこの近辺に住むことになるのでしょう。鳥栖は久光製薬の本社があるので、もしかしたら社員寮もあってそこに選手が住む、なんてこともあるかもしれません。
練習拠点といえば基本的に会社の持ち物であり、チームだけのものとは必ずしも言えなかったりします。中身を直接見たことは当然ありませんが、東レ株式会社の滋賀事業場内にある東レアローズの東レアリーナはサブアリーナまではないはずですし、同じくNECの玉川事業場内にあるNECレッドロケッツの玉川アリーナは、社員の福利厚生(平日の就業後や土日)にも使われるからか、バスケのゴールが設置されています。この他にも、実業団方式のチームは基本的に親会社の施設として敷地内にあることが多いようです。
その点久光は、会社の敷地内でもないところに作ってしまうというのが大きなポイントだと思います。そして記事にある通り、学生やママさんバレーなど、チームに限らず他の人たちも活用できる一大拠点としての構想があるようです。
ちなみに私は何度も駅前スタジアムに行ったことがあるのでこの久光の新練習拠点の建築予定地のことも知っているのですが、駅前スタジアムに隣接する形になるので、いわば佐賀の新たな一大スポーツ拠点になる印象です。
では、久光はなんでこんなに佐賀への移転を加速させているのでしょうか。理由は以下にあると考えます。