久光 制約からの脱出プロジェクト~後編~

久光スプリングス
all text and photographed by
Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

3月にSAGA久光スプリングス株式会社に親会社が変わり、7月にチーム名から「製薬」が取れて久光スプリングスとなった20/21シーズンは、チームにもさまざまな改革が見られました。

前編に続き後編では、久光スプリングスとしての取り組みについてご紹介したいと思います。

①ファンクラブ会員制度の改革

Vリーグのファンクラブ制度は最近どのチームも積極的に取り組んでいる印象があります。

JTやデンソーは19/20シーズンから始めた&改定したこともあってそれぞれ3、4コースでしたが、比較的先進的なNECも今季からロケッツ会員(1000円)に加えてスター会員(5000円)と2コースになったばかり。

元々実業団方式のチームはファンクラブ会員制度が整備しにくいのではと思います。要は、一般の方々を会員組織として組み込むことを想定していないわけです。JT、デンソーといったメーカーはユーザはいますが、直接の取引はないですよね。たばこはコンビニとかで買うものであってJTの直営店(そもそもないですし)で買うという方式はないですし。要は個人情報を取得することが前提になっていない企業体制なわけです(場合によってはプライバシーマークの取得とか必要だったりしますし)。

というのと実業団方式、つまり会社の持ち物なので社員がファンクラブ会員という側面もあります(NECは社員向けにスポーツ後援会という制度があります)。個人的に、ファンクラブを持たない東レはまさにこれだと思います(なので私は、じゃあ親会社のファンクラブに入ろうと思って東レ株式会社の株を買ったのですが)。

ちなみに岡山のファンクラブはクラブチームということもあって「岡山シーガルズを応援する会」は5種類。最高額は10万円です。

久光もファンクラブを改定し、従来の4コースから5コースに。実質的に、先着30名の10万円のダイヤモンド会員を新設した形となりました。

2020-21シーズン・ファンクラブ新規会員メニューのお知らせ | 久光スプリングスTOP

しかもこのダイヤモンド会員、これを書いている時点で「受付終了」となっているということは30名が埋まったということだと思います。

ファンクラブ | 久光スプリングスTOP

ちなみにこの10万という価格は岡山のプラチナ会員と並ぶ最高値です(岡山は人数制限なし)。10万は高いという方もいらっしゃるでしょうが、ファンクラブ価格で10万と言うのは例えばプロ野球だとオリックスや楽天がやっていますし、楽天は田中投手の「マー君クラブ」で180万(!)なんてのもあります。持っている人は持っているんですねえ(遠い目)。

また、3万円のプラチナ会員は「選手声入りオリジナル目覚まし時計」というちょっと珍しいグッズをつけています。3万円のコースはデンソーとKUROBEにもありますが、前者は限定イベントへの招待、後者はサイン入りレプリカが特典のメインとなっている中で、オリジナルグッズを引きにするというのは興味深い取り組みです(岡山だと似た価格帯は2.5万と5万になりますが、いずれもサイン入りグッズが特典の目玉。前者は色紙、後者はボールの違いです)。

ファンに価格という優劣をつけていいのか、という意見もあるかと思います。ただ、ファンクラブというのは貴重な愛情の注ぎ先、なんですよね。その点ではグッズの購入と近いです。ただ、グッズは何点も買えるけれどファンクラブを何口も入る人っていないじゃないですか。その点で単価を上げたのはとてもいいやり方だったと思います。もちろん価格に応じてグッズなりチケット販売開始日、入場順など特典も変わるわけで。これは飛行機に例えるとわかりやすいでしょう。ファーストクラスなら専用の保安検査場があり、ラウンジがあり、最優先で搭乗できる、機内でもサービスがある…

それと同じです。にしてもここまで高価格、かつグッズを豊富にしたのは挑戦だったと思いますし、他チームのいい事例になったと思います。