真っ白なものは赤くしたくなる~NECレッドロケッツあの日の事件~

NECレッドロケッツ川崎
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それから一か月後。VCupファイナル。

古賀、島村、山田各選手が代表で抜け、そしてネリマンも帰国して一見戦力的には落ちていたNECだったけれど、ここは若手起用と割り切ったNECは安田、野嶋選手の活躍などもあってセミファイナルに進出。久光をフルセットで下して、ファイナルに進出した。

古賀選手など撮りどころの選手はいなくなっていたけど、なんのなんの。その分山内選手、そして曽我選手にレンズが向けられていた。どんな選手がいようとNECは撮りどころにあふれているチームだ。

その翌日。ファイナルは同じグループだった埼玉上尾とのいわば再戦となった。一週間前の対戦では0-3と敗れていたが、セミファイナル進出を決めていたので元々本気ではなかったという印象は受けた。

そして第一セットは24-26とされたものの第二セットは25-20でNECが奪う。実は前日のセミファイナルは共にフルセットの激戦だったのだが、埼玉上尾は第二試合だったので疲労度という点ではNECは有利だった。しかし埼玉上尾は第三セットを奪い返し、1ー2で第四セットに突入する。

NECが5ー4とリードして迎えたところで内瀬戸選手の放ったバックアタックはライン際でボールインの判定となって(VCupはチャレンジシステムがない)埼玉上尾の得点となったときに、事件は起こった。突然埼玉上尾のマルコス監督が怒りだしたのだ。

現地で見ていた時は、度重なる審判の判定に堪忍袋の緒が切れたという印象だった。ところどころ判定に不満があるようなジェスチャーをしていた気がしたからだ。このとき金子監督がなにか挑発のようなことをしてそれを見逃した審判への抗議だった、という話もあるが、試合後の会見でも触れられなかったので実態はわからない。結果的にマルコス監督はレッドカードを提示され、NECにポイントが加算され6-5となった。

ただ。これで埼玉上尾の選手たちは奮起し、逆にNECの選手たちは相手監督の猛抗議に委縮したように見えた。7ー7で追いつかれ7ー8とリードされると、リードを奪い返すことは、できなかった。抗議することで流れを引き戻す。マルコス監督は折り込み済みだったのだろう(今季何回か見ていてそういうことをしてくる監督という印象は元々あった)。

委縮。

そう、一か月前、同じこの大田区総合体育館で見た光景と同じだった。さらに言うと同じ1-3でファイナルで敗れる、というのも、一か月前にこの大田区総合体育館で別のチームで見ていた(はい、東レです)。

もちろん、敗れたことは悔しいだろう。ファンだって悔しいだろう。

でも、若い子たちがまだまだ大人になれず委縮しちゃう姿というのも微笑ましいというか、

「こういうチームだから応援したくなるんだよな」

というのがNECの良さなのではと思う。

そしてそれはまんま、ファイナルで1-3で敗れたウチのチームにも当てはまることだったりする。

だから。いつか…いや、そんな遠い未来じゃない。来季、東レ対NECのファイナルを見たいと思った。果たして大人になるのはどっちか。それともお互い大人にならずに優勝する、なんて光景も見てみたい。勝つために大人になること、は必ずしも必要なことじゃないぜ。なんて言いたい。

ちなみにこの「真っ白なものは赤くしたくなる」というタイトルは、バレーボールを乃木坂などの坂道グループの世界に重ね合わせている私が、欅坂46の1stアルバム「真っ白なものは汚したくなる」からなぞらえたものだ。「赤く染まれとどろき」というコピーがあるなど、チームカラーだけでなく人の心を赤く染めるチームだと思うからそう名付けてみた。

悪くはないタイトルだと思う。自分で言うものなんだけど。