2021年の、春になれば久光は

久光スプリングス
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

レギュラーラウンドでもやっていたのかもしれないが、ここまで派手にというか目につくようにはやっていなかったのかもしれない(やっていたら気づく)。だからVCupから生まれた光景なんじゃないかと思う。サーバーに念を送るシーンは、念のため2月の尼崎大会の石井選手のシーンを見てみたんだけど、控えエリアは何もやっていない(池谷選手以外はベンチ入りしている)。まあさすがに大先輩の石井選手にそんなことしたら張り倒される…なんてことはないにしても、さすがにできないだろう。

この話をVリーグ観戦歴の長い先輩にしたら、こういう楽しげな控えエリアを作るのは大卒選手なんだ、と。高卒選手には作れないという。そう考えると白澤、池谷両選手が大卒なので(しかも今季からの加入)、この二人の存在が大きいのかもしれない。

その先輩によると控えエリアが盛り上がる大学として真っ先に挙げたのが鹿屋体育大学だった。なにせ選手ごとにコールが決まっているのだとか。って白澤選手は鹿屋体育大学!なるほど、道理で。

※ちなみに鹿屋体育大学のOGを調べたら元PFUの宇田選手の名前があって、確かに!と思った(笑)。

また、VCupではTOがあけてコートに戻る選手を控えエリアの選手たちが待ち構えて送り出していた。これも初めて見る光景だった。左がVCup、右が上述の尼崎大会である。

久光のTOは基本的に手短に終わり、コートに戻る6人だけを残してみんな引き上げる(たまに個別にアドバイスするコーチがいるくらい)。あなたたちはプロなのだから後は6人でやりなさい、といわんばかりの光景なのだが、それもVCupで変わった。

こんなの久光じゃない、と思う昔からのファンもいるかもしれない。こんなに和気藹々として自由なのは久光じゃない、と昔からのファンは思うかもしれない。でもこれからの久光はこうなっていくんだろうなと思った。私ももし東レから和気藹々さが消えて今あるシーンの数々が見られなくなったら、さすがにファンをやめるかもしれない。

ただ。そんな中でもこれが王者のDNAだと感じさせられるシーンが今季あった。おそらくチームとしては「ここは絶対落とすなよ」という勝負どころの場面を作っているのだと思う。セットやマッチポイントでも何でもない、試合中盤のポイントでもコーチたちが大声を出して鼓舞して、ポイントを奪うとベンチと控えエリアがどっと沸く。そんなシーンだ。

特に久光は大声を出せる男性スタッフが多いので、より気合が入る。ほら、バレーボールに限らず応援団とか、男性の声ってどこかより鼓舞される部分があるじゃないですか。あれと同じ。こういうシーンはさすが久光だなあと思った。

ちなみに白澤選手だが、プロフィール写真を見る限りはどこか物憂げな、おとなしそうな選手だと思っていた。全く間違っていた。この「物憂げでおとなしそう」というのはかつて東レにいた日高選手にも抱いていた感情で、こちらも全く間違っていた。