2021年の、春になれば久光は

久光スプリングス
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

2015年のW杯をたまたまテレビで見たことからバレーボールにハマリ、そのシーズンからVリーグを見るようになり、その年のファイナル3を現地で見て東レファンになろうと決めた私。

それはつまり、対戦相手だった久光のファンにはならないことを意味していた。おそらくだけれど、和気藹々さのある東レに対して冷血な印象があったから、かもしれない。冷の久光、暖の東レ。対比としてはわかりやすかった。

元々私自身は、熱いプレーの合間に垣間見られる和気藹々さが好きなので、そういう雰囲気があまりない久光を撮ること自体は少なかった。新鍋選手に注目するようになってからは彼女ばかり撮っていたけれど、久光の新鍋選手、ではなく新鍋選手そのものを撮っていた感覚で、TOでベンチから飛び出してくる控え選手、みたいな光景のない久光というチーム自体はあまり撮っていなかった。

※なのでそういう光景のない岡山も、撮る枚数は少ない。

ましてや18/19のファイナルで敗れた相手である。Vのチームに敵対感情を抱くことはないんだけど、そこまでいかなくてもやはり興味という点では失せてしまうのは当然だった。試合会場で抱いた、一部の人(チームではないです)への悪感情もあった。とはいえ。19/20シーズンから成績が下降していったのは正直淋しい部分もあった。なんだかんだ私は、冷徹なまでに勝つ、強い久光を求めていたのだろう。

20/21シーズン。

Vリーグで久光を見たのは実質三試合。私の撮りどころだった新鍋選手が抜けてしまったけれど、元々石井選手も撮っていたので撮る枚数自体は変わっていなかった。そして、彼女が抜けたことで新たに見つけた光景、もあった。それがこれだ。

って、選手じゃないけど(笑)。

TOで控えエリアから選手が真っ先に飛び出して来て選手たちを迎える、というシーンは東レとかでよく撮るけれど、スタッフで連写機能を使ったのはたぶん初めてだろう。

私が新鍋選手ばかり撮っていた時もこの光景はあったはずで、全く気づいていなかったことになる。撮りどころが抜けるということは、新たな出会いもある、ということなのだとつくづく思った。

にしてもこの若宮トレーナーの動き、ぜひ現地で見ていただきたいんだけど、ほんと、スピーディーなのだ。TOは相手チームが要求することもあるので気が抜けない。そしてTOの笛が鳴ったらとっさにシューダスターシートと水を持って走り出し、選手たちがベンチに戻るまでにサッと置いて、迎える。本当に、選手たちが戻るタイミングに間に合うように、そして邪魔にならないようにサッと出す。この方、絶対、執事とか向いている(想像するとつい笑ってしまうが 笑)。

※久光の公式が一連の動きを動画で投稿しているのでぜひご覧ください。

20/21シーズンのレギュラーラウンド最終戦となったこのデンソー戦は、勝てば4位というデンソーの執念に押されたのか、前日試合はなかったのに、一方で前日フルセットを戦っていたデンソーにフルセットの末、敗れた。それまで4連勝と上り調子だったのにこの敗戦が効いたのか、順位決定戦でも連敗して結局8位になってしまった。二季前の優勝チームがこれなのだから、チームというのは盤石に見えても崩れるときはあっという間なのだ。