東京の真ん中で咲かせる明日の桜~東京スリジエの挑戦~

Vリーグトーク
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

話は3年前にさかのぼる。

2019年4月に行われたVリーグのオールスターは、そのシーズンからどハマりした私にとって初のV2との出会いだった。そこで印象に残ったのが、当時GSS東京サンビームズに所属していた賀谷明日光(あすみ)選手だった。私がVリーグにハマるきっかけとなった木村沙織さんを彷彿とさせる(あくまで個人の印象です)、というのが大きな理由だったけれど、GSSが東京の派遣会社のチームと知ってさらに興味を持ち、ホームゲームを見に行った。そのときのことはここに書いているし、東京にVリーグのチームがある意義、というのも書いているんだけど、

その後リモートマッチが増えたこともあってなかなかGSSを見に行けず、結局それ以来賀谷選手を見ていなかった。そんな中で退団発表があったので残念に思っていたのだが、4月18日に東京スリジエへの加入が発表されて、おおおっと思ったのだ。

おおおっと思ったのは、デュアルキャリアという点では賀谷選手はある意味先行事例というか。だって、そもそもGSSの派遣社員として、GSSに関係のない企業(派遣先という関係だけだ)で働いていたわけだし、その点は東京スリジエも一緒。さすがに職場は変わっただろうけれど、生活サイクルは今までとほとんど変わらないのではないだろうか。

そして何より、Vリーガーだったという輝かしい経歴がある。いわばコーチのようにVリーグでの経験を選手たち、チームに還元できるというメリットもあれば、チームにとっても「元Vリーガーのいるチーム」とうたえるメリットもある。

Vリーガーだったことをキャリアとして生かせる、という機会は今までは少なかったと思う。コーチや解説者などで生きていける人は元代表選手などごくわずか。では機会を増やすために何が必要かというと、市場が増えること。その点ではチームが増えるのが一番だ。この、元VリーガーがVリーグ参入を目指すチームに加入、というケースも最近増えていて、カノアラウレアーズ福岡の熊本選手や最近加入した溝口選手、アルテミス北海道の奥山選手や小室選手もそうだ。これは地元に帰るというUターンの側面もあるが、いずれにしてもVリーガーだった経歴を生かせる場が増えているのはいいことだ。

だからある意味賀谷選手も、このモデルケースの一つになるのではと思った。

また、これはバレーボール素人の意見としてだけれど、東京スリジエ女子はメンバーが7人しかいないので、紅白戦もできない状況で必然的に男子と練習することになるけれど、日々背も高くてパワーのある男子選手と練習することは、ある意味日々高いレベルのチーム相手に練習をしていて、選手としての成長にもつながっているのではないだろうか。

あと、この日賀谷選手は紅白戦をインスタライブで配信していたんだけど、彼女はインスタのフォロワー数が現時点で1.3万人と、Vリーガーと比較しても屈指の多さなのである意味やり慣れている感が見ていて感じた。これも立派なキャリアだと思うし、SNS慣れしている人、は今のご時世、引く手あまただろう。

今までのようにVリーグの舞台には立てないけれど、働きながらバレーボールを続けるということには何の変わりもないし、このチームでさらにご自身の得意分野を活かせるのではないだろうか。いろんな意味でさらに活躍できる、一人の人間として花を咲かせられるのではないか。勝手ながらそう思った。しかもミドルブロッカーは一人しかおらず、その点でも負担は大きいかもしれない(第一セットは出ずっぱりで、さすがに息苦しかったのかマスクを外したほどで、第二セットは男子選手との二人体制になった)。

長々と書いたけれどただ一つ言えるのは、東京スリジエという楽しみなチームに、楽しみな選手が加わったということだ。

 

千代田区スポーツセンターからの帰り道。土曜日でがらんとしたオフィス街を歩きながら、こんな都心のど真ん中で桜を咲かせようとしている東京スリジエの挑戦、そして選手たちの人としての開花ぶりは、これからも見届けたいと思った。

最後に現時点での全選手をご紹介します。まだ東京スリジエの公式サイトに選手一覧が上がっていないので、代わりになれば。