東京の真ん中で咲かせる明日の桜~東京スリジエの挑戦~

Vリーグトーク
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スポーツで地域密着。そう聞いてあなたはどんなシーンが思い浮かぶだろうか。

たいていは、地元の子供たちとの交流イベントだったり招待があったり、街にはポスターがあふれ、老若男女問わずさまざまの会話の中でも話題になったり…基本的に「スポーツで地域を元気に」という文章に置き換えられるだろうか。

ただ。そういう光景というものは皆さん、地方都市を思い浮かべるのではないだろうか。元々そういう都市は東京と違ってエンタメにあふれていない。街からすれば話題が必要だし、地元愛をはぐくんで街から離れないようにしてもらう───世知辛い話だが、自治体からすれば住民が減れば住民税と言う収入が減る───というニーズもある。または住民人口の多いベッドタウン…。家族みんなでユニフォームを着てそのチームを応援する、というのは地域密着の理想的なイメージだと思う。

では。これが東京の都心のど真ん中、千代田区だったら?

千代田区。皇居が街の大半を占め、首相官邸、国会議事堂や各省庁など政府の中枢が集まり、かつ名だたる大企業が本社を置く街。高層ビルが乱立するオフィスの街。東京駅という一大ターミナルがあるけれどみんな素通りする、とても住宅の匂いの感じられない街。そんな印象だ(秋葉原が実は千代田区だというのは、これを書いていて初めて知った)。

実際、昼間の人口は85.3万人と港区(94万)、世田谷区(85.6万)に次いで3位だけれど、常住人口(本当の意味での住民)は5.8万とダントツの最下位だ(いずれも平成30年3月20日公表の国勢調査資料による)。ちなみにV1女子でわかりやすく言うと黒部市は4万人(令和4年)と言えばその規模がわかりやすいだろうか。

ここは街なのだろうか。地域密着も何も、そもそも住民がいるのだろうか?

東京スリジエというチームはそんな街に生まれた。誕生は2020年8月のようだが、ウィキペディアがないのではっきりとはわからない。ちなみにスリジエは千代田区の花である桜のフランス語からだそうだ。ちなみに東京スリジエであって、スリジエ東京だとアイドルグループになるのでエゴサするときは注意が必要だ。

東京スリジエバレーボールチーム
Just another スクアドラチームサイトサイト site

個人的には最近地方で、将来のVリーグ入りを目指したチームが続々誕生している印象を受ける。私は女子がメインなので女子に限定してしまうが、アルテミス北海道、カノアラウレアーズ福岡、福岡ギラソール、ベスビアス新潟…。名古屋には保育士のチーム・ビオーレ名古屋もできた。一度はチームを解散したトヨタ自動車もサンビエナとして再参入を目指している。来シーズンからはヴィアティン三重女子がV2に加わる。

男子は追えていないのでわからなくて申し訳ないが、全国6人制バレーボールリーグのチーム名を検索した限りでは、22/23シーズンからV3に参入する福岡ウイニングスピリッツ以外ではVリーグを目指すことを掲げているチームはあまりなさそうだ。
※これはチーム数が男子(29)は女子(22)より多いというのと、V2までの女子と違って男子はV3とステップが増えるからかもしれない。

地方は盛り上がっている。では東京はどうか。なにせ、V1で唯一東京にあるチーム・FC東京でさえ親会社が撤退したほどだ(NECレッドロケッツは神奈川のチームだ)。結果的にネイチャーラボが手を挙げて(ありがとうございました)譲渡されることになり、引き続き東京を拠点とすることで消滅は免れたが、人口も、メディアも多い東京からチームが消滅する可能性もあったのだ。

実は、東京は空白地帯なのだ、と思う。そんな東京、しかも千代田区という住民も少ないど真ん中、にチームを作るというのはすごいな、と東京スリジエには注目していた。さらに驚いたのは今年3月に女子チームも立ち上げたことだ。Vリーグに入っていないクラブチームで男女を抱えているのは、知るところここだけだ(ヴィアティン三重は来季からV2になるので)。

そんな東京スリジエが、4月30日に桜会というイベントを開催するという。紅白戦、女子チームお披露目…最近さらに興味を持つことがあった私にとって(この話は後ほど)これはありがたかった。申し込みも済ませて、会場の千代田区スポーツセンターに向かった。