コート上の選手たちについては言うまでもない。ただ、コート上だけでなく控えエリア、そして登録外になった選手たちも、「選手」として一つになっていた。特に登録外の選手たちはハリセン片手に、応援団のリードの元にまるで一ファンのようにコートの選手たちを後押ししていた。登録外の選手たちが応援している光景はよく見たけれど、ハリセンまで持っていたのは(私が見た限りは)久光だけだった。
そしてコート上の選手たちも彼女たちだけでプレーしていたのではない。試合前、そして試合中にアナリストやコーチの分析をかみ砕き、実践できたことも大きいだろう。指示がどんなに的確でも、選手たちの理解力と実践力がなかったら意味がない。特にファイナル3は1セットを取られてからの修正が見事で、選手たちとスタッフが一枚岩になっている印象を受けた。
いや。一枚岩どころではなかった。これはファイナル初戦のことだったが、何かのシーンで、久光の応援団がとっさに太鼓を叩いた。選手を後押しする絶妙のタイミングに、ローテーションの関係で控えエリアにいた濵松選手が、応援団に向かって「ナイス」とばかりにサムズアップをした。私もそこそこ長くVリーグを見ているが、応援団にこういうジェスチャーをする選手は初めて見た。ああ、久光は応援団とも一枚岩になっているんだな、と思った。二枚岩だ。
でも。それだけじゃなかった。
これはファイナル3のことだ。ウチが久光に敗れたのを目の当たりにして、失意で退場の列に並んでいると、久光のチームスタッフの人が通りかかって、ファンの人たちに挨拶をして喜びを分かち合っていた。
ウチでは見られない光景だった。
思えば久光は場内にブースを出して、グッズをチームスタッフ自ら売っていた。ホームの神戸大会では、発売を控えた石井優希選手のフォトブックを前面に出しての気合の入った展開を見せていた。ウチもグッズは売っていたが、委託しているViVAステーションとしてのブースだった。つまり、チームスタッフではなかった。
久光は選手、コート周りのスタッフ、運営スタッフ、それらが三枚岩になっていると思った。三枚ブロックと言えば伝わりやすいだろう。それだけの強度があった。それが結果的にファイナル3とファイナル初戦を含む終盤戦の強さにつながったと言っても過言ではないだろう。選手だけではない。チームを取り巻くいろんな役割の人たちが一つになっていた。
本当の意味でのチームになっていた。
そこにファンも加わって、気づけば一大ファミリーが誕生していた。
4/16のファイナル二戦は、ウチが出られなかったのは残念だったけれど、そんな「チーム」の集大成を見届けようと思っていた。そして、「優勝奪還」を誓った石井優希選手のフォトブックのタイトル通り、泣き虫の笑顔がいわば完結するのを見届けようと思っていた。
残念ながら4月16日のファイナル第二戦は中止になり、初戦の対戦成績から久光が優勝した。選手たちが歓喜に沸くシーンを、ファンの人は現地で、映像で、そして写真で目にすることはなかった。
秋から冬に突入しつつあった10月の開幕から半年が過ぎた。日が昇る時間は早く、そして落ちる時間は遅くなり、着る服はどんどん薄くなった。散っていった木々には若葉が芽吹き、桜も咲き誇った。春がやってきた。でも、久光ファンにとっては本当の意味で春がやってきたことだろう。何よりチームは濵松、平山といった若手選手が台頭してきた(二人とも代表に召集された)。その点ではあの一年前のVCupの光景は、これからの久光の未来にあふれていた。
来季は春高を制した深澤めぐみ選手に加え、岡山から西村選手も加入する。チームはますます分厚くなる。
急遽予定が開いたファイナル第二戦当日に外に出て、あたたかい空気に触れて思った。ああやっぱり誰かが言う通り、春は久光の季節なんだなと。