リベロ:小幡真子(JTマーヴェラス)
同じく、JTを連覇に導いた立役者です。いや、主役といってもいいでしょう。そして、実は今回が初五輪ということに今気づきました。
17/18シーズンはファイナル6で一位通過だったのに決勝で久光に涙をのみ、18/19シーズンはファイナル3で東レに涙をのみ、と来た中でようやく19/20で優勝しただけでなく、20/21で連覇と、JTの強さをゆるぎないものにしたのは彼女あってこそです。
コート上ではもう完全に監督ですね。テクニカルタイムアウトでも彼女が話していることが多いですし、吉原監督は完全にコートのことは彼女に任せている印象です。吉原監督は基本的に背を正して座ったままですし、プレー中に声を出すところなんか見たことないです。
小幡選手は指示も明確なんですよね。最初のテクニカルタイムアウトで「16点までに3~4点開かせたい」とか、明確な数値目標まで設定して。経営者の言葉ですよ、これは。あとプレーの合間に「お願いします」という言葉もよく聞きます。これはきっと役割分担を明確にして、これはきっちりやってね、ということを言っているのでしょう。信頼の証といえますね。
セミファイナルで、一瞬静寂があったときに「もっと声出して!声掛け合って!特に籾井。」という声が客席にまで聞こえてきてファンも笑ってました。一種の公開説教(笑)。ですが、小幡選手のキャプテンシーに触れた思いでした。
ただ、怖さもあるんだけど、プレー同様選手たちをケアする守備範囲も広いんですよ。個人的に小幡選手の素晴らしいところは、ローテーションの関係でコートから離れているときもちゃんと控えエリアに行っているんですよ。こういうときたいていのリベロはベンチに座るのですが、小幡選手は全てではなかったかもしれないけれど、控えエリアにも行って、控え選手たちと一緒に盛り上がったりしているんです。
個人的にはこのシーンも好きでした。
橘井選手の得点時、振り上げた右手をまるで刀をしまうようにシュッと戻すという一種の振りがあるのですが、控えエリアにやってきた小幡選手が、看板の上に設置されている緩衝材を刀のように使って遊んでいて。こういうおちゃめなところもあるんですよ。
あと、対戦相手にも気持ちを向けているというか。これは20/21シーズンの皇后杯、そしてリーグ戦の表彰式のシーン。いずれも優勝JT、準優勝東レだったわけですが、代表仲間でもあるキャプテン・黒後選手に声をかけているんですよね。よくやったな、と労っていたのかな。
ちなみにVS嵐だったかなあ…代表選手が登場したバラエティー番組で、黒後選手と同部屋だった小幡選手が「黒後が起きない」というパワーワードを披露して(笑)、ブブゼラか何かを鳴らしてやっと起きる黒後選手、という動画を紹介してました。
小幡選手でこんなに長くなるとは思わなかったんですけれど、プレーもさることながら、そういうキャプテンシーだったり、撮っていてとても楽しい選手ですね。素晴らしいプレー、喜び、厳しさ、明るさ…バレーボールの魅力は、彼女を撮っていれば全部撮れますね。
五輪の話に戻すと、JTではそうして全てを統括する立場にありますが、代表はそうではないんですね。簡単な言い方をすれば埋もれます。そもそもキャプテンは荒木選手ですし、副キャプテン(古賀選手)でもない。テクニカルタイムアウトの指示も相原コーチがやっていて、VNLを見る限りは彼女がJTのように、いわば仕切っている感じは受けなかったですね。つい物足りなさを感じてしまいました(笑)。
とはいえ得点時の喜び方とかは相変わらずでしたし、プレー面だけでチームを引っ張れる存在になっていくのかな。どれだけ彼女が仕切れるのかがもしかしたらポイントになってくるのかな、とも思います。コート上のことはコートにいる選手が一番わかっているわけですからね。
小幡選手で言うと、ファンへの姿勢にはいつも感服させられます。
これは皇后杯優勝のときですけど、インタビューは応援団席を背にしていたんですけど、終わったらちゃんと振り向いて挨拶してましたし。これはリーグファイナルですけれど、場内を一周したときにカメラに気づいたらちゃんと目線を送ってくれました(JTファンではない私にも、ですよ)。
この人の発する言葉ってものすごく重いというか。ちゃんと考えている、というよりいろんなものへの感謝を言葉にして伝えられる、そんな感じです。それをJTファン、というよりは会場にいる人すべてに向けて発している。だから、グッとくるんですよね。いつかVリーグ機構の代表理事会長になってほしいですよ。
五輪メンバーが12人ということで、リベロは彼女一名。その分責任も重いと思いますが、彼女なら安心して任せられる。そう思います。
続いてはミドルブロッカー編です。