東京五輪 中田ジャパンの空虚 その3~貫いた強者の論理~

日本代表
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続いては、この5年間…というよりは今回の五輪でより顕著になった、中田監督の采配というか、論理を私なりに読み解きます。

今回の大会で私が痛感したのは

強者の論理

だったということです。

■中田監督にとってのチームは、何人なのか?

私は15/16シーズンからVリーグを見始めたのでそれ以前のことはあまり知らない、という前提でお読みいただきたいのですが(つまり底が浅い部分もあります)、中田監督率いる久光は三冠(リーグ、皇后杯、黒鷲旗)を達成するなど、常勝軍団だったわけです。

私の印象ですが、この人の基本的な考えは、コート上の6人に対して「あなたたちはプロなんだから、最後は自分たちで解決しなさい」と、いい言い方なら全てを任せてますが、悪い言い方をすれば突き放している。

そしてコート上の6人をそれだけの存在としているということは一方で、レギュラー組と控え組を明確に線引きしている印象があります。レギュラー組を別格にすることで尊厳を与えると共に、控え組に発奮材料を与えている。

ただ一方で、線引きすることで断絶を生み出す危険性もあります。

なので、このやり方はチームを分解させかねない可能性をはらんでいるわけです。

では、そんなチームでもどうやってまとまって勝てるのか。

勝つからです。勝つことでチームがまとまっているんです。結果が出ているから、まとまるんです。

ではなんで勝てるのか。選手個々の能力もありますが、それを掌握している監督の裁量も大きいです。監督のカリスマ性で成立するケースもあります(久光時代はそうでしょうね)。

だから、私はこれを強者の論理だと思っています。

私は、中田監督はこれを日本代表でもやっていたのでは…と思います。

例えで出して申し訳ないですが、19/20シーズンの久光は、前年の優勝からチームが一気に瓦解して、7位という結果になりました。私自身も傍から見ていてあれ?なんか変だな、と思うことが多かったです。選手が大量に抜けたわけでもなく、古藤選手くらい。もちろんその「くらい」がめちゃくちゃ大きかった、というのもありますが、

何より大きかったのは、常勝軍団であるがゆえに「負けが込んだときの立て直しのノウハウがない」ということだったと思います。

今回の東京五輪では、中国代表が似たような状態に陥っていたと思います(まあ、結果が出ていたので世代交代が進んでいなかったというのもあったと思いますが)。

勝つことでまとまっていたチームが勝てなくなると、まるで支柱を抜かれたかのように、一気に瓦解しちゃうんですね。

強者の論理も大事ではあります。

ただ。冷静に見てください。世界における日本代表は強者ではありません

今の日本が世界で戦う時に必要なのは、弱者の論理です。

今回の大会でわかりやすいのは、初戦で中国を完膚なきまでに叩きのめしたトルコが近いと思います。実力差で劣る相手に、データ分析などで対抗する。

中田監督はプライドが高いのかもしれませんね。それを否定しているわけではないですが、今回の大会はそれが結果につながらなかった。

私が一番感じたのは、「伝説のチーム」という言葉だったり、中田監督の言う「チーム」は、本当に12人でしたか?ということ。

コート上の6人のチーム

ではなかったですか?