古賀紗理那選手の涙

NECレッドロケッツ川崎
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

バレーボールに興味を持ったのはたまたまテレビで見た2015年のW杯。木村沙織選手と並んで興味を持ったのが古賀紗理那選手だった。入口は容姿だったけれど。で、12月の川崎大会や皇后杯、そして2月のファイナルステージで目にしたけれど、そのときはすっかり近江選手に魅せられていた。古賀選手は今思えばそれほど印象には残っていなかった。

次世代の全日本のバレーボールを背負う存在(と報道されている)、という認識もあったし五輪予選も注目して見ていた。が、結局五輪には選ばれなかった。なかなか調子が上がらなかった、というのが理由のようだが、バレーボールはまだまだ素人なので私はそこまではわからない。

久しぶりにNECの試合を見たのは2016年11月の西尾大会。そこで見た古賀選手は、大人になったというか、たくましくなったなと思った。その後、船橋大会、ひたちなか大会と見て、積極的に声を出していたり、すっかりチームの一員になっているなと思った。

私は、古賀選手はNECに入って本当によかったなあと思っている。五輪メンバーから落選して、たぶん、失意で戻ってきたと思う。でもそんなときに近江選手とかが「お帰り」と言って待っていた。NECという家はみんな彼女の帰りを待っていた。NECはそんなあたたかいクラブだと、試合を見ていて感じる。そしてそのショック(があったかどうかはわからないけれど)を引きずるまもなくAVCアジアクラブ選手権があったのもよかったのかもしれない。全日本五輪代表の古賀紗理那にはなれなかったけれどNECの古賀紗理那にはなれた、というところか。

そして何より彼女に期待しているのが、木村沙織選手だと思う。五輪後に「紗理那を宜しく」みたいなことを言っていたと何かで読んだ。古賀選手本人も、木村沙織選手の背中を追いかけていると思う(下の写真のサーブ時のボールへの手の添え方なんか木村沙織選手そっくりだ)。全日本での絶対的なエースにならなければ。でも、そのためにはまずNECで絶対的なエースにならなければ。

2017年1月15日。大田大会のNEC対日立。首位対決となったこの試合はフルセットにもつれ込んだ。フルセットの前半が終わり、コートチェンジでNECが私の座っているサイドに戻ってきた。そこに古賀選手の姿はなかった。思えば木村沙織選手が下げられているところなどケガ以外では見たことはない。大事なところで下げられてしまう。それは絶対的なエース、にはまだまだ、ということなのではないだろうか。

試合後のアフターケアでは笑顔だった彼女が試合終了後の挨拶で整列したとき、目を疑った。泣いていた。もしかしたらそれは、このような大事な試合の最後にコートにいなかった自分のふがいなさを責めていたのではないだろうか。

ただ。この日はホームゲームということでファンイベントがあった。それは彼女にとって救いだったのではと思った(試合後にはチョコレートのお渡し会があったけれどもしかしたら出てこないんじゃないかと心配したが、元気に出てきてほっとした)。

スタンドに向けてボールを投げていて、ふと、NECの大応援団が陣取るスタンドを見て…

やがて思いっきりボールを投げ込んだ。

勝手な推測だけれど、私にはこれだけ応援してくれるファンがついている。この悔しさを、丸ごと受け入れてくれるこれだけのファンがついている。私の所属しているNECというチームには、これだけのファンがついている。

まるで悔しさを始めとした、今の自分の気持ちを全部ボールに詰め込んで力一杯放り投げた、そう見えた。

そんな彼女の表情は思いっきり私の心を撃った。この選手が今の木村沙織選手の年齢になるまで見ていたい(つまり10年だ)。そう思った。

古賀紗理那はNECの古賀紗理那だ。そしてNECのDNAを十二分に吸収した古賀紗理那は、ものすごい選手になると思う。