君の名は日立リヴァーレ

日立Astemoリヴァーレ
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

実はセッターというものに興味を持ったのは2016年2月のファイナル6大田大会。そこで初めてエンド側でバレーボールを見て、セッターというのがいかに大変か、そしてチームの肝であるか、を知った。

2016年11月の西尾大会で日立を見たとき、あるシーンでの、佐藤美弥選手のトスの上げ方にとても興味を持った。レセプションのボールからのトスで、ボールを低い位置からバッと高速で、逆サイドの選手にトスを出したのだ。うまく説明ができないのだけれど、簡単に言えば、リズミカル。まるでオーケストラの指揮者のように、ボールのリズムを自由に操っている、そんな印象を受けた。

日立は攻撃のバリエーションが豊富なのだが、それをパッパッと、「次はこれを使おう」というのを次々と生み出し、面白いように決める…

しかも人を使うだけでなく、急に速いボールを繰り出したり、緩急も自在に操る…

それが佐藤美弥選手の魅力ではと思った(もっとも最近NECには読まれている気はする)。

選手名鑑だったり月バレを読むうちに知ったのだが、日立の特徴は高速バレーなのだという。私なりに解釈すれば、相手が守備の体制を整えてしまう前にササッと一気にケリをつけよう、ということだと思う。サッカーで言えばカウンターだと思う。いわば、弱者が強者に対抗するための策という部分もあるのだが、日立リヴァーレは優勝経験もない、しかも2013/14シーズンからプレミアリーグに昇格した新興勢力であり、ある意味、強豪に対抗する策として生み出されたものだったのかもしれない。

まだまだ私には各チームの戦術的な特徴をつかめるほど目が肥えていないのだが、日立のやり方というのはなんとなくだが、他とはちょっと違うなと思っていたし、それは間違いなく佐藤あり紗選手のレセプション技術と、佐藤美弥選手のトスの多彩さがあって初めて成立するものだと思う。野球でいえばセンターラインというところだろうか。

個人的には今季の日立の最大の補強は、佐藤美弥選手をキャプテンにしたことだと思う。今まで見ていてそれほどみんなを引っ張るというタイプではなさそうと思っていたのだが、どうしてどうして。セッターとしての自信にキャプテンとしての責任が加わって、ますますパワーアップしている印象を受ける。

そしてやがて私はレシーブ時にセッターのサインの出し方に注目するようになった。そこである程度そのセッターの自信だったり、チームの中での存在というのがけっこうわかると個人的には思っている。

その点佐藤美弥選手はどこか先生のようだったり、オーダーをとるウエイトレスのようだったり、とにかくはっきりとしている。「ここはこれでいく」というのをはっきりと明確に伝えようとしている印象。個人的にはVリーグで一番好きなサインの出し方だ。

日立リヴァーレでどうしてもふれたいのが、応援団の存在。得点時の音楽に興味を持ったと書いたが、実際に試合で見ると、タイムアウトで会場全体も盛り上げてくれることを知った。

去年はランニングマンだったが今年は「Perfect Human」を取り入れている。彼らのダンスが、自然と会場にいる人たちの注目を集め、やがて笑いが起き、最後は相手チームのファンからも拍手が送られる…会場を一つにする。なんて素敵な光景なんだろうと思った。

しかもこれは先日のファイナル6の岡山大会で気づいたのだが、彼らは相手チームのサーブミスでは音楽も流さずコールも一切しなかった(この試合ではNECも同様だった)。相手のミスによる得点で盛り上がるのは失礼。そんな相手チームへの敬意によるものではないだろうか。

プレー、戦術、そして応援スタイル…

Vリーグの楽しみ方は全て君が教えてくれた。

その君の名は、日立リヴァーレ。