春になれば久光は

久光スプリングス
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

スポーツにはヒールというか、他を寄せ付けない強さを持ったチームというのが存在することが多い。プロ野球で言えば巨人。最近はソフトバンクもそうかもしれない。伝統と輝かしい歴史があり、豊富な資金力を背景に(と言い切りたくはないんだけれど)、圧倒的な戦力を誇り、そのジャンルをリードする。憎らしいほどに。

私にとって久光はそんな印象だった。強い。結局最後は勝ってしまう。だって監督(当時は中田監督)だってニコリともしない。目を光らせている。怖い。そして何より長岡選手。2015年のW杯でバレーボールに興味を持った私にとって久光=長岡選手だったわけだが、そんなに笑う選手でもないしクール。初めてVリーグを見に行ったのは2015/16シーズン開幕戦の久光対上尾だったが、その強烈なジャンピングサーブと、試合後のインタビューでのクールな受け答えが、なおさら久光というチームのイメージをそういうものにさせてしまった。笑わない集団。ちなみに長岡選手はこのインタビューで、何か聞かれても「そうですね」を言わなかったので(これはどのスポーツでもここから入る人が多い)、思いっきり好感が持てた。ものすごく考えて(というより自然にできているんだろうけど)話しているなと。

ちなみにこれが初めて見に行ったVリーグで撮った写真の一部だ。

しかも後で聞くところによると、久光は移籍同意書による移籍を認めていないという(移籍同意書という制度を知ったのはだいぶ後だった)。バレーボールをきっかけにツイッターでやりとりさせていただくようになった方は、久光を新選組に例えた。幹部だろうと誰であろうと組を脱会したり脱走したら死刑という鉄の掟を持ったあの新選組。なるほど、わかりやすい。

2015/16シーズンは皇后杯も、そしてリーグ優勝までしてしまった。しかもリーグは3位だったのにファイナル3でわが東レを、そしてファイナルで日立をあっさりと破って優勝してしまった(素人目に優勝は日立だと、ファイナルステージが始まる前に予想していた)。強い、強すぎる。誰かが、「サッカーは最後はドイツが勝つスポーツ」なんて言ったけれど、バレーボールは最後は久光が勝つスポーツなんじゃないか。そう思っていた(と、ここまで読めばわかると思うけど私はアンチ巨人だ)。

そんな印象が変わっていったのは、Vリーグ観戦でカメラを持ち込むようになってからだ。一眼レフの、望遠ズームのあるファインダー越しに試合を見るということは、双眼鏡で試合を見るようなものだと気づいた。選手の表情がよくわかるのだ。そして、ファインダー越しに見た久光は、私の印象とは全く異なっていた。例えばこの写真。左はコート上、右は控えエリアだ。

私は、控えエリアの選手たちの動きは必ずチェックする。控えエリアの選手たちを見ればそのチームがわかると思うほど。その点ではNECは完璧だし、日立は応援団に合わせて「やーっ」てやったりとか楽しそうだし、東レの雰囲気も好き。よくタイムアウトのときに控えエリアの選手たちがウォーミングアップで走り出すけれど、コートエンドにいるスタッフに「楽しそうに」「ハイタッチするか」どうかも重要なポイントだ(ちなみに岡山は全くやらない)。