I want ARROWS to come~東レアローズ滋賀24/25ファイナル~

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

2年前の2023年4月22日。あの日はファイナルだった。レギュラーラウンドを一位通過したウチの相手は同じく四位のNEC。あの日も二セットを先に奪われ、インターバルで向かったトイレでは、もうこれはもらったと言わんばかりの相手ファンの会話と笑い声が聞こえた。

ああ、あの日と展開も一緒だな…。

ところが第三セットになると、今までが嘘のように急にチームが見違えるように良くなった。第三セットは序盤から谷島選手のサービスエースが飛び出し、リードを奪う。ここは絶対にリードを保ち続けなければ。ここで失点したらいい流れが途切れる。そしてそのまま試合が終わってしまう…。この日エンドにいた私は、目の前でサーブを打つ谷島選手に必死に声援を送った。リサいいぞ、このまま行け、リサいけー!

その気持ち、そして願いは(もちろん)私だけではなかった。アロともも必死に声を送った。二階スタンド席に設けられたアウェイエリアの上に陣取ったアロともたちが声援をリードし、一階アリーナにいるアロともはそれを見ながら声を合わせる。崖っぷちの状況で、場所も立場も垣根も超えてアロともはさらに一つになった。

結果第三セットは25-15と一方的な展開になり、第四セットも25-17と20点を取らせず、流れはウチに来ていた。なんとか今日勝って明日につなげたい。明日勝ってセミファイナルに進出したい。

このチームを、もっと見たい!

だが。立ちはだかったのは二年前と同じく相手の山内美咲選手だった。彼女のサービスエースもあって第五セットは終始リードされ、7-15と敗れた。彼女がPOMに輝いたことで、私の二年前の古傷が再び痛み出したのは言うまでもなかった。

もちろん、安易に二年前と一緒にすることはできないだろう。あのときはレギュラーラウンド一位だったけれど今回は七位。立場は全然違う。ただ、展開はあまりに似すぎていた。きっと二年前と重ねた選手もいたはずだ。

それは一方で、改めて超えるべき壁というものを示してくれたのかもしれない。今シーズンはまず自分たちの「チーム」をいろんな意味で超えてきた。でもそれだけではまだ栄光には届かない。超えるべきものはまだ先にあるんだよ、と。

そして。序盤は苦しんだけれどそれがウソのように中盤に躍進して、でも最後は…というこの日の展開は、まんま今シーズンの東レアローズ滋賀だった。

 

試合終了後、これ以上古傷を悪化させたくない、「森のくまさん」だけは聞きたくない…そう、そそくさと会場を後にしようとすると、たまたま近くにある人がいるのが目に入った。

詳しいことは書かないが、立場を超えていわば同士のように今シーズン接してきた方だった。私自身勝手に新聞を作ったり、勝手にいろんなことをしているけれどそれを初めて認めてくれたような方。そして、全てとは言わないが、やっていることはお互い似ていた部分もあった。このチームのために。そのベクトルは同じだった。

私が歩み寄ると相手も気づいた。普段、試合後に交わすグータッチは自然と握手となり、そして自然と軽い抱擁になった。どこか申し訳なさそうにしている彼にかけた言葉はこれだけだった。

「楽しかったですよ」

チームがどんどん「チーム」になって強くなっていく。
アロともがどんどん「チーム」になってまとまっていく。

でも、その変化の一方で失ったものはなく、チームは相変わらずだった。

こんな楽しいシーズンはなかった。SVリーグ女子のどのチームより、ウチは楽しかった。そうはっきり言える。誇りと共に。

 

毎シーズン、このチームの写真を投稿するにあたって櫻坂46などの坂道系グループの世界に沿ったキーワードを勝手に決めているが、今シーズンは「I want ARROWS to come」だった(Xでのハッシュタグは#東レ滋賀_IWAC)。これは櫻坂46の新曲「I want tomorrow to come」から取ったのだが、明日が来てほしいという文にかけて、アローズに(上位に)来てほしい。そんな意味だった。

7位という点では「来なかった」。でも、本来の意味通り明日は間違いなく来た。

このチームは来シーズン、もっと強くなるよー!

 

I want ARROWS to come
~東レアローズ滋賀24/25ファイナル~

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