そして応援の楽曲も、刷新こそされたもののそこにはちゃんと継承があった。曲は替わったけれど連続得点時の「ワッショイ」はちゃんと残ったし、セット間にはおなじみ「Little Bitch」も流された。応援団の皆さんはチームアローズとなって従来のスタンド中心ではなくアリーナにも降りてきて全方位に、より場内を盛り上げる存在になった。チームによっては応援団が解散に追い込まれたり、まるで従来のVリーグへの当てつけのように今までのものが全否定される中、ウチについては従来のやり方と新たなやり方を見事に融合していた。
もちろん、今まで慣れ親しんだ楽曲からガラッと変わったことに抵抗は全くない…とは言わない。ただ、「(選手コートネーム)!もう一本ー!」という基本形は変わってなかったし、「こういうのもありだね」にはなったと思う。そして、別にチームにそういう意図があったわけではないと思うが、結果的に「ウチはかつてのVリーグ時代からの伝統を色濃く残す」という意地もあったのかもしれない。
だが、ホームゲームの雰囲気という点での変化はこれだけではなかった。というより、今までにはなかったであろう二つの大きな変化が、このシーズンは起きていた。
まず一つは、楽曲とは別の自発的な応援(コール)。得点時の楽曲が流れた後とかの無音時だと声援が届きやすいので、そのときに声を出すファンは多いが、いわばそれを体系化したというところか。きっかけは谷島里咲選手がサーブを打つ時の「リサいけー!」だと思うが、これがいつ誕生したのか、は私も記憶にない。一人のアロともが始めたことに、だんだん他のアロともが同調して広がっていったという感じだが、こういう自発的な応援が生まれたのはSVリーグになってからのアウェイの環境、が大きいと思う。要は、ホームチームの対戦相手の応援で楽曲を流せなくなったからだ。
かつてVリーグでは、ホームチームであろうと対戦相手であろうと、音響機材を持ち込んで応援の楽曲を流すことができた。新生Vリーグと言われた2018/19シーズンからはチームによっては相手チームの機材持ち込みを禁止して太鼓のみ、というのも出てきたが、それでも太鼓は持ち込めたので最低限の応援活動はできた。
ところがSVリーグはアウェイチームの音響機材どころか太鼓までNGにしてしまった。要は組織だった応援をできなくさせたのだ。これはたぶんよりホームゲーム感を出させるために、ホームチーム一色にするために相手チームを排除する、ということなのだろう。その姿勢の是非を語ると長くなるので別の機会に譲るが、要はアウェイではより自発的な、かつ、一体感を生み出す応援手法をアロとも自らが模索する必要があったということだ。
今まではそういうのも(ウチに限らず)応援団の方がやっていた。アウェイでも機材を持ち込んで、ホームゲームと同じ応援をしていたわけだが、機材もNGであれば応援団の方が必ず行く必要はなくなってしまったわけで、そこは現地のファンに委ねられたわけだ。
オレたちがやらねば!
だからホームゲームでは楽曲の合間を縫って、そしてアウェイでは相手の演出に少しでも抗いながら、どうやって選手を、何よりチームを鼓舞できるのか、ということに頭を巡らせるようになった。彼らは試合後に飲みながらその日の応援の振り返りをするようになった。あそこはこうすればもっと声が届くのでは…。あの選手にはどういうコールをしてみようか…。推しの活躍なり、その日の試合の感想で盛り上がる飲み会はいつの間にか作戦会議になった。