12連勝中のハイライト、それは何と言っても2025年3月8日のアウェイでのAstemo戦だった。第一セットを19-24と相手にセットポイントを奪われてからなんと7連続得点で、26-24と一気にひっくり返してしまった。その勢いで試合もストレート勝ち。セットポイントを奪われてからが勝負、崖っぷちになってからが試合開始、というわけのわからない(笑)チームは一方で、相手にとってはさぞかし不気味なチームだっただろう。


そんな好調さもあったとはいえ、チームの光景も変わっていった。これは個人の印象だが、それが如実だったのは田代佳奈美選手を取り巻く光景だった。笑顔が増えたのもあるけれど、後輩たちにいじられるようになったのが大きかった。これは勝手な想像だけれど海外から帰ってきて、しかも7年ぶりの東レ復帰。若い選手ばかりでかつチームの雰囲気も変わり(移籍加入も増えた)、戸惑いもあっただろうし、若い選手に囲まれて壁を作っていた部分もあったのでは…
だが、勝った試合後に樫村選手とお辞儀をしあう儀式?や、サービスエースで歓喜の輪に加わることもなくさっさと次のサーブに向かう彼女をいわば引き留めに来るかのような松岡選手…等々、あ、なんかこのチーム変わったな、と思わせてくれたのは彼女を取り巻く光景が中心だった。


ダメダメだった組織が、誰かがやってきたことでガラッと変わって、一致団結して奇跡を起こす…。映画、ドラマではありがちな話で、例えばチーム売却のために勝てないチームを作ろうと、落ちこぼればかりが集められたチームが優勝する映画「メジャーリーグ」や、客が入らず従業員もやる気の欠片もないレストランが、伝説のギャルソンが来たことをきっかけに繁盛店になっていくドラマ「王様のレストラン」、降格圏にあえぐチームが、青年監督の就任でさしたる選手補強もないまま一気に優勝争いをするチームに変貌するマンガ「ジャイアントキリング」…。最近だと弱小ラグビーチームが、左遷されてきた敏腕GMによって優勝するドラマ「ノーサイドゲーム」もそうだ。
ウチがダメダメだった、とは言わないが、(言い方は悪いが)寄せ集めの集団が、シーズンが進むにつれ選手間の相互理解が進み、「チーム」になっていく…。今シーズンはそんなドラマを目の当たりにしていた気分だった。こう言っちゃなんだが逆になっていく、バラバラになっていくチームだってあるだろうから。
目に見える戦力補強はないのにどんどん強くなっていくチーム。もちろんそこには序盤はいなかった深澤・青柳両選手の復調も大きかったが、誰かが不調になってもそれをカバーできるのも大きかった。その真骨頂だったのが、2025年3月16日の埼玉上尾戦だ。