エンドラインのヒーロー・迫田さおり選手

東レアローズ滋賀
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そして、これはあまりVリーグに詳しくない者としての意見なので実際は違うのかもしれないけれど、迫田選手って叩き上げだと思う。高校だって例えば下北沢成徳みたいな名門校でもない。正直言えば上背があるわけではない(175cmだそうだが、あまりそれを感じさせないというか)。体だって華奢だ。バレーボール選手として、というかアタッカーとしてはあまりいない体型だと思う。

だからこそ。自分なりの価値というものを見つけてそれをとにかく磨いてきた人じゃないかな…って思う。それがコート内での運動量だったり、そして何よりバックアタックだったり。「私には背もないからその代わりこれを磨こう。これを迫田さおりの武器にしていこう」。そんな感じだったんじゃないかなと。

それはどこか、私たちに身近さを感じさせてくれる気がする。ものすごく正直に言うと、頑張れば、木村沙織選手にはなれなくても迫田さおり選手にはなれるのでは。そんな存在だった気がする。木村沙織選手は天賦の才能というか、天才型という印象を受けるけれど(実際はそんなことはないんだけれどイメージとして)、迫田選手は完全に努力型という気がする。いや、もちろん才能あってこそだけれど、「頑張ればこうなれる」というお手本を示してくれる存在というか。私は男性だしバレーボールもやったことないけれど、バレーボールをやっている女子に夢というよりは目標を与えてくれる選手だった気がする。

夢は木村沙織選手が与え、目標は迫田さおり選手が与える。そんな二人だったのでは…と思う。

だから迫田選手を見ていると、どこかOLに重なるというか。仕事をバリバリこなしそう。ものすごく働きそう。そんな気がしていた。私が社長だったとして選手の中から最初に取りたい社員は間違いなく彼女だ(バレーボール関係なく、ね)。でも、あのコート内での運動量を見ていたら皆さんもおわかりいただける気はする(ちょっと話はそれるけれど、Vリーグの選手って会社の社員に例えられやすい気はする。この人は営業向きだな、この人は経理向きだな、とか。それはVリーグが企業チームだからこそ、という気もする。NECの近江選手なんか営業部長って感じだけれどもし上司だったら逃げ出したい。そして木村沙織選手は全く社員のイメージが湧かない…広報かな!? 笑)。

そんな点でも迫田選手ってものすごく身近な存在だったんじゃないかなあ…と。

ある意味あのバックアタックって迫田さおり選手の生き方そのものかもしれない。最初は後方だったけれど努力してバレーボール選手として全日本に選ばれるまで一気に駆け上がってきた。しかも、相手コートの選手から見れば後ろから突然現れたわけで。彗星のごとくとでも言おうか。

そして、「迫田さおり」でしかできないバックアタックを決める…ここまで築いてきた努力の証であり結晶として…

それは例えるならスーパーマンかもしれない。例えば前線の選手たちのスパイクがことごとく跳ね返されるとき、「よーし、任せておけ」みたいに突然後ろから現れて一気にカタをつける…

例えば仕事でミスをして部員全員で必死にカバーしているときに「手伝うよ!」と言って他の部門の人たちが助けに来てくれたように。

迫田さおり選手のバックアタックってそんなものにも重ね合わせてしまう。簡単に言うと救世主、だ。そしてヒーローだ。

という長話も何なので、ここからは写真で。