エンドラインのヒーロー・迫田さおり選手

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

サッカーのシュートに弾丸ミドルというのがある。普通シュートというとゴールの側のペナルティエリアの中から決めるというイメージがあるけれど、弾丸ミドルというのはその外から放たれるもの。たいていは、相手ゴールのそばにいるフォワードではなく少し離れているミッドフィルダーなりディフェンダーが打つことが多い。走り込んでくる、助走をつけている分その力がボールに伝わるから、球速はとても速い。誰が名付けたか「弾丸ミドル」というわけだ。

私がサッカーにハマったとき、弾丸ミドルもサッカーの魅力なのだと知った。ゴールから遠くにいる人が突然現れてものすごいシュートを放つ。それまでとはうって変わった、まるで切り裂く閃光、そんな感じだ。

2015年のW杯をテレビでたまたま見てバレーボールに興味を持った私は、木村沙織選手を見に東レアローズの試合を何回か見た。やがて、バレーボールにも弾丸ミドルがあるんだなと知った。知ったというより、ある人が教えてくれた、と言った方が正しいかもしれない。

その人の名は、迫田さおり選手。

はっきりいってノーマークだった。テレビで見た2015年W杯で覚えたのは木村沙織選手と古賀紗理那選手、あとは宮下選手と長岡選手くらいだったと思う。まあそんなもんだと思う。いきなり全員は覚えられない。迫田さおりという選手を知ったのは、たぶんだけれど東レアローズ観戦二試合目の皇后杯だったと思う。

最初に印象に残ったのは、コート内をとてもすばしっこく動き回っている選手がいるなあ、ということだったと思う。相手のスパイクなりでボールが自陣に帰ってきて、誰かがレシーブを上げるやいなや、ネット際にいたのにサササッと斜め後ろに下がって助走をつける体制に入る。それを何度も何度も繰り返す。そのいわば献身的な動きがまず印象に残った。それが迫田さおり選手だと気づいた。この下がり方なんかまさにそうだ(40秒からご覧下さい)。

そして、サーブの時などコートの後ろにいるとき、エンドライン付近から助走をつけて走り込んでスパイクを放つ…

それが「バックアタック」というものだ、ということを教えてくれたのが迫田さおり選手だった。へえ、バレーボールにもサッカーで言うところの弾丸ミドルがあるのか。バレーボールにハマリ始めた当時の私にとって、バレーボールの新たな魅力を気づかせてくれたのも彼女だった。

2016年3月の、所沢市体育館のファイナル3はコートエンドから見ていたのだけれど、コートエンドで見るとバックアタックがどんなものかがよくわかった。セッターの陰に隠れる形になるから、相手からすれば突然選手が現れてスパイクを打たれることになる。一種の奇襲なわけだ。バレーボールにおける高等戦術───誰にだってできるわけじゃない───であり、これが見られるのって貴重なんだなと。

あれからVリーグの試合をたくさん見たけれど(女子だけ)、迫田さおり選手以上のバックアタックというものは未だに見たことがない。