Vリーグという企業スポーツ

Vリーグトーク
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私は近江あかり選手が引退したのがショックで、でもそれは古賀ちゃんが成長してチームも優勝して、一つの区切り、としてだと思っていたけれど、それだけでなく「さすがにそろそろ仕事しないと」という感覚によるものだったのかなとも思うようになった。しかも会社のサポートのおかげで優勝までできた。後は私が会社に貢献しなければ…

そう考えると、まだやれると思える選手たちが続々とやめる理由が私の中でわかった気がした。これまでバレーボール選手として、コートで輝いていた選手たちが今度は一OLとして新たな人生を歩んでいる…ランチに行ったりとか普通のOLの暮らしをするのだろう。それはものすごく微笑ましいことだと思う。

だから移籍の場合は移籍ではなく転職、なんだろうなと。移籍にはいろいろ理由があると思う。チームのプレースタイルと合わなくなった、逆にチームからあわないからといわば干された…。でも、だからといって退団しても、入団ではなく転職であれば相手の企業が受け入れてくれるかどうかは別問題で(つまり単純に選手としての実力だけで入団できるわけではない)、そう考えるとそんなに簡単なことではないんだろうなあと。

ただ、岡山はそう考えるとものすごく特殊だと思う。だってNECや東レみたいに親会社を持っていない。高校を卒業してバレーボールを続けようと思っていろんなチームからオファーが来た場合、岡山というのはなかなか選択肢には入らないだろう。だって第二の人生を考えたときにNECとかなら他の部署で仕事があるけれど岡山はまず無理だ。だから選手の獲得という点では岡山は大変だと思う。

ただ、たぶんだけれどそれでも選手を集められるのは、まあ他のチームから声がかからなかった、というのもあるだろうけれど、河本監督の存在が大きいんじゃないかなあと。「この監督さんならウチの娘を預けられる」という親御さんは多い気がする。そしてたぶんだけれど、岡山で成長して他のチームに移籍する、というストーリーを描くことも多い気がする。

たとえば18才で高校を卒業して岡山に進む。で、4年やってそこで芽が出なかったとしてもまだ22才。別の道に進むにはまだまだ若い年齢だ。つまり4年間を大学で過ごしたと考えればいいわけで。岡山がチームとして存続できている部分ってそんなところもあると思う。あと、岡山だと例えば寮なんかも家賃は安いし、同じ100万円でも東京のチームとでは全然かかるコストが違うから、成立できるんだろう。岡山は一種の理想郷という気はする。

「プロ」か「企業」か。揺れ動くバレーボールのスーパーリーグ構想 (3ページ目)
3月末に行なわれたオールスター戦。今後、Vリーグの改革はどう進んでいくのか 日本バレーボール機構(Vリーグ機構)は5月31日、昨年9月に発表していたスーパーリーグ構想についての会見を行なった。そこで、スタート時期は2018年秋シーズンになる…

個人的には河本監督のお話をもっと聞きたいんだけれど、上記の記事にある「1000万円程度の利益」というのはまさにそう。たとえば1000億の利益を生み出す大企業で1000万稼いだところで、逆に1000万赤字になったところで、別に何ってことはないのだ。NECだって経営的にいいとは言えないけれど、レッドロケッツの赤字など他の事業に比べれば全然少ないだろうし、会社としてもっと手をつけるべきところがあるから誰も気にしないと思う。先日株主総会があったけれどそこで「NECレッドロケッツはいくら赤字なのか」とか聞く人もいないだろうし。話題にも上らないだろうし。

話がめちゃくちゃ長くなってしまったけれど、今のVリーグは企業スポーツなんだなと。だからこそ成立できている部分が大きいのだなと。今は野球もサッカーも、そしてバスケットもプロ化が進むけれど、全日本がそれなりに注目されるスポーツが、こうして企業によって成立している、つまりプロ選手の集まりではない、というところはもう少し注目されてもいいと思う。元々サッカーだって昔はこうだったんだから。

本当はスーパーリーグ構想についても述べたかったけれどさすがに長いのでそれはまた改めて。