Vリーグという企業スポーツ

Vリーグトーク
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

じゃあどうなっているかというと、会社に入社してそのバレーボール部でバレーボールをする。これがほとんどの選手の状態ではないだろうか。会社員なので、雇用は確保され給与ももらえる。その代わりバレーボールだけやれる状況ではなく、デスクワークなど仕事をする必要もでてくる。その仕事の比率がどれくらいかはわからないけど、なんとなく、Vリーグ女子の選手たちは仕事はあまりしていない気はする。バレーボールだけに集中できる環境になっていると思う。

なんでそうなっているかというと母体が大きいのと、バレーボールをすることで会社に貢献しているから、だと思う。バレーボールで選手が頑張ることでチーム名、つまり企業名が報じられる。特に久光は扱っている商品との相性が抜群にいいし。個人的には全日本の試合はテレビ中継が多いけれど、そのときにテロップに所属名が入るので、それは企業にとっては大きな宣伝機会だと思う。

だからものすごく簡単に言うとバレーボール選手たちは広報部所属という感じだ。バレーボールをすることで企業名をPRする。そこに企業が価値を見出しているから、選手として雇用しているということなのだろう。しかもこれはNECレッドロケッツのFacebookでよく目にするんだけれど、地元の学校でのバレーボール教室だったり多摩川の清掃活動だったり、企業が地元に対して行う貢献活動に対して、バレーボールの選手たちが貢献している。

例えば清掃活動は会社としてもやるんだろうけれどそこに「レッドロケッツの選手たちが参加します」と言えば地元の人も興味を持つだろうし、記事にもなれば多摩川にゴミを捨てるのはやめましょう、みたいな啓蒙活動にもなる。

そういう、バレーボールの選手だからこそできること、というのがあるから、企業としても雇用ができるのだろう。そしてこれはたぶん、なんだけれど、NECは経営的に苦しいときも多いので、赤字削減のときに「バレーボールチーム抱えている場合じゃない」とたいてい挙げられることが多いので、「その代わりこういう活動をしています」ということで存続させてきたと思う。

ただ、個人的に興味深いのは、選手が企業のPRの存在になっている割には、選手がその企業の広告に起用されているケースが少ないこと。久光がサロンパスの広告で長岡選手と石井選手を使っていたのはバレーボールマガジンの選手名鑑か何かで見たけれど、でもそれこそ木村沙織選手が東レの広告に起用されたことは調べた限りはなさそうだ。もっとも東レはあまり一般向けの商品は出していない、広告が少ないというのもあるけれど(なので個人的には東レの奥深さというか懐の深さを感じることが多い)。

バレーボールだけで食っていけないというのは選手もそうだ。中学、高校とバレーボールをやってきた。これからも続けたい。木村沙織さんみたいなバレーボール選手になりたい。ところがバレーボールだけでは稼げない。しかも当然だけれどスポーツなので長くても10年くらい、という選手寿命だ。引退後バレーボールだけで食っていくことは難しいだろう。なんでか。市場が小さいからだ。プロ野球だと監督、コーチ以外にも解説者とかの道もあるけど、バレーボールで解説者だけでやっていくなんてものすごく難しいだろう。既にいるわけだし。

これが例えばスポーツ紙とかでバレーボールの試合結果等、記事が増えそこに解説記事が…となればまだ仕事は出てくるが、Vリーグは試合結果のみが伝えられるだけだし、ほぼ毎日のようにやっている野球と違って4ヶ月、しかも土日の試合だけだ。

バレーボールという市場は小さいのだ。となったときに、バレーボールに進む時点で第二の人生というのはある程度考えなければいけないというのがバレーボールの実情だと思う。いや、別にバレーボールに限らないけれど、その考える必要性がよりバレーボールは高いと思う。

だからものすごく正直に言うと、バレーボールの選手って、例えば東レアローズだったら、東レアローズに入団した、というよりは東レに就職した、という感じになると思う。バレーボールの選手として引退しても東レの社員として働ける…

逆に言えばバレーボールの選手が選手として活動できる場を企業が与えてくれているということだ。

だからだと思うんだけれど、選手はある程度活動したらもうバレーボールはやめて、会社に貢献する、ということを考えていると思う。私にバレーボールに集中させてくれてありがとう。だからある程度やったらやめて後は社業に専念します。そんな感覚だと思う。

だからこそ私たちから見て「えっ、まだまだやれるのに」という選手たちがバレーボールをやめるケースが多いのではないだろうか。