2018年7月7日。僕は明治神宮野球場の三塁側スタンドにいた。野球では何度か訪れた球場だが、ライブで訪れるのは初めてだった。
乃木坂46───。これを見るためだけに僕は札幌から東京にかけつけていた。といっても、彼女たちを生で見るのはこれが初めてだった。
元々アイドルに興味があったというわけではない。2010年にたまたま見たaikoさんのライブに衝撃を受け、そこからいわゆる追っかけというものを始めるようになった。アイドルグループに興味を持ち始めたのは2013年からであるグループを追いかけるようになり、2014年からはそれが地域振興とシンクロしているご当地アイドルグループに興味が移り、九州のアイドルグループ(LinQだ)を追い続けて今に至る。
そう、簡単に言えば「非メジャー」。ここに僕は何より価値を見出していた。そんな身にとってはAKBやハローは興味の対象外、アウトオブ眼中だった。乃木坂だって名前くらいは知っていたけれど、というレベルだった。ただ、そのアイドルグループに乃木坂から流れてくる乃木流れみたいなファンが一定数いて、その御礼じゃないけれど乃木坂のCDを借りてきて曲を聞いたことはあった。でも、そこまでだった。
じゃあなぜ今更乃木坂、なのか。それは、僕が尊敬し、敬愛してやまないある人のこの言葉が全てだった。
「ヒット作を生み出したかったら、ヒット作に学べ」
指南役(サン)と呼ばれるその人は、自著『「朝ドラ」一人勝ちの法則』でそう言っていた。僕はその頃ちょうどその九州のアイドルグループを、どうすればさらに伸ばせることができるのか、をいろいろ考えていた。でも、この一言で気づいた。そうか、売れさせたいのなら売れているものから学べばいいんだ。じゃあ今一番売れているアイドルグループって何だ?
答えは簡単だった。こうして僕は2018年を迎えると共に乃木坂を登り始めた。
まずは歴史を学ぼう。ちょうど帰省していた東京で書店に行くと、乃木坂のコーナーがあるくらい書籍であふれていたが、そのほとんどが写真集だった。そんな中で見つけだして、歴史を学ぶならこれが一番いいなと思って手にしたのが「乃木坂46物語」だった。
そして次はやっぱり一度はライブを見なければ、ということになるわけだが、乃木坂は頻繁にライブをやっているわけでもなく、ましてや僕の住んでいる札幌には来ない。そもそもチケットも入手困難だ。じゃあDVDを見るか…