マッチポイントで迎えたウイニングショット。
そのボールが彼女に上げられたとき、ちょっとホッとした。
そして私の推しの選手のブロックをかいくぐり、ウチのコートにボールが落ちて、久光スプリングスの3年ぶりの優勝が決まった。
私は久光にとっての皇后杯は、石井優希の大会になるかどうか、だと思っていた。そしてそれは結果的に当たっていたと言ってもいいだろう。
2021年12月19日。皇后杯決勝の高崎アリーナは、11時15分の試合開始を前に10時に開場された。対戦相手の東レと共に選手たちは既にコートにいて、ウォーミングアップを始めていた。決勝ならではの緊張感が既に漂っていた。
そして、久光のユニフォームが赤だと気づいてびっくりした。そもそも準決勝はPFUと青のチームだったので決勝に上がればどちらか青だし、ウチは黄色ユニがあるので、久光は青だと思っていたからだ(そもそも準決勝で青ではなく黒だったことは今打っていて気づいた)。
そして赤いユニフォームをまとった石井優希選手の姿を見て…。ふと、東京五輪のことを思い出した。
東京五輪の前哨戦となった2019年のワールドカップで彼女は躍動した。黒後選手がケガで、古賀選手もそれほど調子がよくなかったこともあって、彼女の存在は目立った。このまま東京五輪は彼女が引っ張ると思っていた。元々そんなに「私が」と前に出るタイプではないように思うが、そんな彼女に(初めて)スポットライトが当たるのが東京五輪になると思っていた。
久光の酒井監督も人間としての成長を期待して19/20シーズン、彼女をキャプテンに任命した。東京五輪を前にして、という思いもあっただろう。修羅場を経験してほしい。ところが久光は前年の優勝から一転、低迷して本当に修羅場になってしまった。常勝軍団だっただけに、負けが込んだときの立て直しのノウハウがない。キャプテンとしては非常につらいシーズンだったはずだ。彼女はついてなかった。
しかも、東京五輪は一年延期になってしまった。その間に代表メンバーも入れ替わり、しかもメンバーを固定する中田監督の方針で、彼女の出番は減った。五輪メンバーには選ばれたものの、もしかしたら…ということも十分にあり得たと思う。当落線上にいたかもしれない。彼女はついてなかった。