現在③:アリーナ建設断念
今年2月。酒田市がSVリーグのライセンスに則ったアリーナ建設を断念するというニュースが流れました。
まず整理すると、SVリーグのライセンス基準としては2030/31シーズンに5000人収容のアリーナでの80%以上の開催が必要です。それまでは3000人ですが、庄内にはこれを満たすアリーナがないため、今シーズンのアランマーレ山形は、山形市に隣接する天童市の山形県総合運動公園の総合体育館をホームアリーナとしています。
ただそこも4000人足らずで、現時点で山形県内には5000人が入るアリーナはありません。そのため、酒田市に建設する道を探っていたのですが、市としてはそんな高額な費用の調達は無理だと。
そりゃ当然でしょう。というのが私の考えです。人口25万という庄内地方の規模を考えれば、というのと、隣接する山形都市圏である村山地方は倍の52万人ですが、山形と酒田はバスで二時間以上かかるわけですから(直通する鉄道もありません)、そこからの集客は見込めないわけですよね。
この報道でかつて大河チェアマン(当時はまだバイスだったかな)が単に市の人口で比較してましたけれど、広域都市(経済)圏で考えなきゃダメなんですよね。
あと、各地で進んでいるライセンス基準を満たすアリーナ建設or改修は、どこも地元のBリーグのチームとセットなんですよね。デンソーの郡山もそうですし、久光、東レもそうです(国体もセットですが)。さすがにSVリーグだけでアリーナを作るのは難しいですし(単純に14日のうち2日しか稼働しないわけですから)、Bリーグだと千葉ジェッツのLaLaアリーナは専用ですけれど、あれは場所柄アーティストのライブでも採算が成り立つわけで。
そんな中で、Bリーグもない庄内に、いわばアランマーレ山形単独でアリーナを作るのは採算面でもどう考えたって無理です。そもそもINPEX酒田アリーナは昨年改修していたわけですが、であれば5000人に拡張する改修を同時に行っていてもおかしくはなかったわけで。それすらできない状況だったといえます(もっとも実際に行きましたが、あのアリーナを拡張するのはちょっと難しいかな)。
唯一可能性があるとすれば、バスケ(Wリーグ)、ハンドボール(リーグH)にもチームがあるアランマーレ全体のホームアリーナとすることですが、となると各チームは秋田、富山からホームを移転することになるわけで、それはそれぞれのチームの地元とのつながりという点ではできなかったのでしょう(それぞれの練習拠点も必要になりますから)。
そして。これについては建設断念の際の酒田市長のこの言葉が全てではないでしょうか。
「SVライセンス」に関し「参入条件が地方都市には厳し過ぎないか。地方都市の一意見として、スポーツの素晴らしさを伝えるため条件の再考も必要ではないかということを申し述べていきたい」
荘内日報ニュース「酒田市 アランマーレのホームアリーナ整備断念 建設資金の調達困難 マザータウンとして相互支援・協力」
ではどうするのか。道は二つです。
①SVリーグを離脱し、Vリーグにいわば戻る
とはいえ実は(新)Vリーグも2030/31からは2000人収容に引き上げられます。となると1040名のINPEX酒田アリーナはライセンスを満たさず、2720名収容の鶴岡市の小真木原総合体育館がホームになります。つまり、庄内にとどまることはできます。そして60%以上の開催が基準なので、逆に言えば40%は酒田で開催できます。ただし、リーグのレベルは下がります。それを選手が、そしてファンがどう思うか、です(当然注目度も下がります)。
②SVリーグに残るために、Bリーグと共に山形でアリーナ建設を目指す
これがまさに、先日Jリーグのモンテディオ山形、Bリーグの山形ワイヴァンズと共に始まった、アリーナ建設に向けた署名活動です。
これは私の推測(でも間違いないと思う)ですが、この計画だと天童市にある既存の山形県総合運動公園の総合体育館の改修または同敷地内への建設だと思います。というのも、この公園自体がモンテディオ山形の管理下(指定管理者)になっていますし、モンテディオ山形は新スタジアムをここに作ります。であれば、アリーナもここに整備して相乗効果を図りたいはずです。結果的にオール山形でアリーナ整備を目指す、ということですね。
では仮にB・SV両リーグのライセンス基準を満たすアリーナをここに整備できた場合、どうなるか。当然ですがアランマーレもここをホームアリーナにしますし、となると庄内では20%しか開催できません。今シーズンの全44試合→ホーム22試合だと4.4試合だけ、です。事実上、酒田から天童への移転ですね。極端に言えば福島に移転するデンソーと、その距離は違えど同じことです。
これについて第三者の私が口をはさむことではないのですが、はたから見た身として思うことは、メリットもあるということ。山形都市圏に移ることで、いわば庄内地方のチームから山形(正確には村上地方)のチームになるということ。つまり市場は拡大し、潜在的なファン予備軍は増えるということです(もちろん庄内のファンも失うので単純にプラスではありませんが)。
アクセス面でも仙台や福島からのアクセスは向上しますし、山形新幹線もあるので東京からも便利になります。つまり集客が増える可能性はあります。
そしてこれは前乗りしたときに地元のテレビ局のローカルニュースを見て思ったのですが、テレビ局など地元メディアは山形市にあるんですよね。となると、山形都市圏にあった方が取り上げられる機会はグッと増えるわけです(庄内にも荘内日報はありますけれど…)。実際見ていてモンテディオ山形のことは結構割かれていましたし、となるとアランマーレもより多くの県民に知ってもらえる可能性は出てきます。
あと大事なこと。元々山形にはパイオニアレッドウィングスがあり、それはこの山形県総合運動公園の総合体育館をホームとしていたので(東北パイオニアの本社が天童にあったので)、こう言っては何ですが、再びバレーボールチームが天童に戻る、とも言えます。
結局は広域のSVリーグか、狭域のVリーグか。これに尽きると思います。例えばSVライセンスの準加盟であるブリリアントアリーズも、今回「信州ブリリアントアリーズ」になったのは、本拠地のある上田という狭域でなく長野県という広域に移るということですし、5000人を満たすアリーナが長野市にある(ホワイトリング)からということでしょう。
元々「V.LEAGUE REBORN」で、Vリーグは「より地域共生を重視するリーグ」として定義されてますから、狭い地域で共生していくVリーグというのは一つの形ではあるわけです。
ただ。これで本当にいいのでしょうか。おそらくアランマーレは、選手たちの住居や練習拠点は今のまま酒田にとどまることでしょう(山形BPOは酒田にしかないので)。とはいえ、試合も大幅に減ることで酒田市としてはあまりメリットもないわけで、練習拠点を今のまま貸してくれるかはわからないですし。とはいえプレステージインターナショナルの山形BPOがあるということで酒田市としては無視できないでしょうし…(雇用が生まれているわけですからね)。
ではどうしたらいいのでしょう。そのヒントも、酒田にありました。