パリ五輪 眞鍋ジャパンの実感 その3~活性化と明確化~

日本代表
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

「ポリバレント」という選手への新たな価値

皆さんは「眞鍋ジャパンを象徴する選手」として思い浮かぶのは誰ですか?

私はやっぱり宮部藍梨選手なんですよね。それは、アウトサイドヒッターとミドルブロッカーという両方のポジションを担えるだけでなく、リリーフサーバーでも頻繁に出てきましたし、一人三役だったわけで(通訳もできたので四役とも 笑)。その2でも書きましたが、彼女がいたのでリベロ二人制ができたと思います。

こういう、一人でいくつもの役割を担える選手はサッカーではポリバレントと呼ばれたりするのですが、野球でも万が一のために全ポジションが守れるユーティリティプレーヤーは一人はベンチ入りしたりしてますし、代表でもそういう選手が重宝されるとわかればこれも一つの目標になるのでは…とも思います。「ポリバレント」という一芸を磨く、というところかな。器用貧乏なんて言われがちですが、全てのプレーを高めればそれは才能になる、ということですね。

海外移籍選手増

パリ五輪後、も含むと、この三年間で代表に登録された選手で海外リーグに所属していた(する)選手は井上愛里沙、柴田真果、石川真佑、松井珠己、関菜々巳、籾井あき、福留慧美、小島満菜美各選手(順不同 記事公開時点)と8名。いやあ、一気に増えたなあと。コロナ禍で行くに行けなかった選手もいた可能性もありますが、これだけ海外に挑戦した代表選手がいた時期はないのでは…(私は比較的新規のファンなので)。

これを眞鍋さんの功績とするのは無理があると思いますが、背中を押した部分は間違いなくあったんじゃないかなと思います。それはどういうことかというと、選手たちが自分と向き合い、成長するためには、という自問自答をすることが多くなったんじゃないかな…と。その結果、海外に答えを求めに行くようになった、と。

ではなぜそう思うのか。というのが次にお話しする大事な話です。

数値という基準の明確化

代表合宿に密着した番組でもやってましたが、練習での数値を壁に貼ったり、選手たちに数値を意識させること、は非常に重視していた印象です。眞鍋さんが出した「眞鍋の兵法」という本を読んだのですが、OQTのブラジル戦の第五セットで古賀選手を外したのも数値が低下していたから、とはっきり言ってます。キャプテンであろうとエースであろうと、数字が悪かったら外す。聖域はなかったわけです。

なんで判断基準が数値なのか。これも「眞鍋の兵法」に書かれていたのですが、えこひいきの排除なんですね。女子の世界では例えばある選手と少し話していただけでひいきしているのでは、と見られてしまうようです。なので、数値を選手起用の判断基準にしていればそういう懐疑的な目は基本的になくなりますよね。

ただ、この数値を判断基準にしたことで選手たちは日々、自分の数値と向き合うことが増えたわけです。となると、自分には何が足りないか、とか、代表に残るには何が必要か、ということを数値という目に見える形でわかるので、その数値を上げるためには、という目標が描きやすくなったと思うんですね。仕事で言えば毎日営業成績を貼り出されるようなもので、選手にとっては苦痛な部分もあったかもしれませんが、練習の成果で数字が向上していたらそれはモチベーションになりますからね。

まあ全てが数値で指標化されるわけではないですが、選手が課題克服の目標を描きやすかったのは事実かなと。そう思ったのが、今年4月のキックオフ会見です。

ここで、デンソーからブラジルリーグに移籍していた松井珠己選手が「高いブロックに対しての組み立てを勉強してきたので、自信をもってトスを上げたいと思います」と言っているんですね。そのためにブラジルに行ってきました、と言わんばかりの。こういうことだと思うんです。

実際にお会いしたわけでもないですが、眞鍋さんは「お前はどうしたいんだ」という、自主性というか、「こうしろ」と答えを出すのではなく自分で答えを出させる監督だと思うんですよね。それもあって海外に挑戦する選手は増えた気がします。世界と戦うためには、世界で戦わないといけないわけですからね。

つらつら書いてきましたが、個人的に眞鍋さんの功績というかな、最大の特徴は次に挙げるこれだと思います。その前に。皆さんは眞鍋さんが会見で発表してきたチームのコンセプトだったり目指す姿、で真っ先に思い浮かぶキーワードはなんですか?