パリ五輪 眞鍋ジャパンの実感 その2~問われる軌道修正~

日本代表
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気になった軌道修正の背景

この二試合を見ていて感じたのは、両国とも日本対策をしっかり行っていたなと。これは、もちろん直前のVNLで戦っていたのもありますが、前述の通り予選ラウンドの試合&対戦国数が減っているのもあったと思います。つまり、対策に時間が割きやすくなったと。

これは私の勝手な考えですが、日本が予選ラウンドを通過して上に行くには、相手チームの分析不足だったり、要は「なめられている」ことが必要だったのではと。他の国との対決が大事で、日本戦は優先度が下がる。そんな相手に勝つ、というのが日本が勝ち上がるための条件だったのではとも思います。

ですが、今回のレギュレーションでは上位二チームの日本戦の比重が上がってしまったんですね。

ピーキングをVNLに持ってきたのがまずかった、なんて声も見かけましたが、日本はパリ五輪出場がかかっていたし、こう言っては何ですが、ピーキングを後ろに持ってくるのは強豪国の戦い方。日本は先手必勝で行くしかないんですよね。

そして。決勝までガチでやったからだ、という声も、その相手のイタリアが五輪で優勝したことを考えればそんなことはなかった、とはっきり言えるわけですし。てか、イタリアはOQTで五輪出場権を獲得できず、今年になって監督も変えた中で、VNLを通してチームの完成度を高めていったと思うので、日本と一緒なんですよね。彼らもピーキングという概念はなく、とにかく「チーム」にしていこうとした結果だったと思います。

そして。予選ラウンド敗退という結果の戦力・作戦面などの詳細な分析は有識者の方にお任せしますが、私としてはこの記事が私の考えに近いです。

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セッターを変えるということはチーム戦術を変えるということ。軌道修正ですね。それ自体が間違っているとは言いませんし、VNL準優勝という結果も出していますが、例えるのなら以下なのではと。

・マイナーチェンジのはずが、フルモデルチェンジになってしまった
・アプリのバージョンアップのつもりが、OSのバージョンアップを強いられることになった

仕事で言えば、デザインがほぼ完成していたけれどある個所の色が気になって、そこを直していたら全体のデザインに影響して他の個所にも手を付けることになってしまった、とかそういうところでしょうか。微修正のつもりが全体修正になってしまった…なんていうのは、皆さんも仕事上で経験したことはないでしょうか。

VNLではうまくいったと思っていたけれど、実はほころびがあって、でも大きく変えてしまったので小さな修正ができなかったのでは…、というのが私の感想です。上記の記事の古賀選手の「特にオフェンスの精度がチグハグだったのが敗因」という言葉が引っかかるんですね。東京五輪のように予選ラウンドが5試合なら、それを通して修正ができたのかもしれませんが…。しかもいきなり格上相手の二連戦になったのもキツかったと思います。

とはいえ繰り返しますが、それが敗因の全てではないですし、相手が強かったんです。

変えたことが悪いと言いたいわけではないです。ただ、その変更を言い出したのは監督側なのか、選手側なのか、そしてそれは選手・スタッフの総意なのかという過程と背景は気になります。ここは知る由もないですが(ゴシップレベルの記事は出てくるかもですが)、そこは協会として把握して、今後に活かしてほしいと思います。
VNLをほとんど見ていない奴が何を言っているんだと思われても仕方ないですが、パリ五輪を見ていた中で感じたことくらいは述べてもよいのでは。

さて。今回のタイトルを「実感」とした理由ですが、東京五輪に比べて強くなった、という実感はファンの方は抱いたのではないでしょうか。ありありと感じたという意味の実感と、一定の成果という実りがあった感じがする、という意味の実感。その二つの意味を込めています。

さて、今回のパリ五輪は日本戦以外もかなり見たのですが(女子のみです)、そこで感じたことは三つです。