古賀紗理那のいたVリーグ。9シーズンの光景

NECレッドロケッツ川崎
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

勝ったときはその余韻に浸りたい選手もいるだろうし、わざわざ試合直後に言わなくてもロッカーで言えばいい。でも、あえて試合後すぐに、しかも観客も見ている前で捕まえて直接言うこと、に彼女は意味を見出していたはずだ。

嫌われてもいい。チームが強くなるためならば、それはしかたない。その頃の彼女からはどこか、人を寄せ付けない空気をまとうようになっていた。

そしてその結果はもう言うまでもない。2022/23シーズンはチームを皇后杯、リーグ優勝の二冠に導いたし、翌2023/24シーズンは共に連覇だ。

ちなみに私は、いつかNECと東レのファイナルが実現しないかと思っていた。というのは、このチームに共通性を感じていたからだ。それは、「もろさ」を抱えている点。勝つには非情に徹することもあるし、狡猾にならないといけない。大人になる必要があるというところか。でも、そうでなくても勝てる。そんなことを証明してほしいと思っていたし、これは一ファンとしての考えだし何度もファイナルで涙をのんでいたので容赦いただきたいが、相性の良さもあってNEC相手なら優勝できる、という不純な思いもあった。

2022/23で東レ…ウチが負けたのは、ウチに古賀紗理那がいなかった、これに尽きた。彼女は時には鬼になって強いチームを作り上げたのだ。まず自分が大人になることで、チームを大人にしていったというところか。しかも翌2023/24シーズンは「連覇しなければ意味がない」とばかりに、それがさらに加速した印象だ。もちろん今にして思えばラストシーズンと決めていたから、というのもあっただろう。

NECだけでなく、Vリーグに古賀紗理那が君臨した。2023/24はそんなシーズンだった。

気づけば、古賀ちゃんは古賀さんになり、そして古賀キャプテンになっていった。
NECの古賀紗理那から古賀紗理那のNEC、そして最後は古賀紗理那のVリーグ、になっていった。

ちなみに、私が撮った最後の彼女はこれ。結果的にNECを最後に見た、2024年2月10日のSAGAアリーナの試合後のVOMインタビューだ。最後の写真がプレーではなくインタビューか、と思ったけれど、結果的に彼女を象徴する写真になったと思う。なぜそう思うか。

かつてはインタビューは試合以上の緊張の面持ちで受け、話した後に「あー、うまく話せなかった」とばかりにすぐ苦笑いを浮かべることもあった彼女は、風格を漂わせるようになっていた。

インタビューといえば。結果として最後になった引退会見の質問は、引退後の自分像に関するものだった。おそらくだが記者は、子供は何人だ、とか、子供にもバレーボールをさせる、みたいな見出しから逆算したのだろう。だが彼女は、そんな(下衆な)意図を見透かしたかのように「秘密ですね」とだけ答えた。

そのときの表情からは、やんわりと拒否しながらも、これ以上寄せ付けない冷徹さも感じられた。笑みも浮かべていた分、その冷徹さが際立った。

VOMインタビューだったり会見における表情、というものを長年見続けてきた私にとっては、それが何より彼女の人としての成長が感じられてきた光景だったのかもしれない。だから、間違いなく彼女にとって最後となる会見を見届けて、こう思った。

ああ、古賀ちゃんだったあの彼女は、西田さんになったんだな。