古賀紗理那のいたVリーグ。9シーズンの光景

NECレッドロケッツ川崎
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こんなこともあった。2023年1月の岐阜での試合は、試合前に子供たちがボードと共に「古賀ちゃん、結婚おめでとう」コールをしていたのだが、完全に無視していた(子供たちから歓声が上がってなかったので、一切応えていなかったはずだ)。

たぶんだけれど、代表のキャプテンになってチームを率いること、をNECで実践しようとしたのかなとも思うし(ウィルハイト選手がいたとはいえ、決して絶対的な点取り屋というタイプでもなかったので、日本代表に近いチームとは言えた)、前のシーズンは1P取れば三位通過、しかも会場は練習拠点の玉川アリーナ、という有利な状況の最終戦の久光二連戦(通称:玉川大決戦)で連敗して、ファイナル3に進めなかったのも大きかったと思う。

気づけば最後の優勝は2016/17。その後5→6→8→3→4位と、チームは強くはなっていっても大事な試合で勝てないもろさも同居していた。特に2020/21シーズンはファイナルステージでJT相手にフルセット負け、VCupファイナルでも埼玉上尾に敗れるなど、大事なところで委縮してしまう(と思った)光景をたて続けに見ていたからなおさらだった(そのことは記事にしたほどだった)。

日本代表を勝たせるためには、まず自分のいるチームを自分の力で勝たせないと。代表をまとめるには自分のいるチームをまとめないと。今にして思えばそんな意識がそうさせたのではと思うし、パリ五輪で引退することを既に決めていたので、この二年で自分の持っているもの全てをチームに注ぎ込む、という思いもあったのだろう。

ただ、それは一方で軋轢も生んだと思う。そう感じた試合があった。

2023年2月25・26日の三重・四日市大会でNECは東レ、久光相手に連敗したのだが、いつもはにぎやかな控えエリアの選手たちも淡々としていて、明らかにチームの空気が悪かった。たまたまとは思うが、ちょうどその直前の2月10日には西田選手との馴れ初めの記事が公開されていて、それも影響していたのでは…と個人的に思った(なんであのライターは、シーズン真っ只中のこの時期に公開したのだろう)。

Vリーグをそれなりに見ているある人(NECファンではなく中立的な立場の人)も、あの四日市の雰囲気はおかしかったと言っていたので、それが彼女の影響かどうかは別として、チームをまとめる難しさはこのとき感じていたのではないだろうか。引退会見で「時には厳しく当たった」と言っていたが、それは代表だけでなくNECに対してもそうだったと思う。汚れ役をあえて買っていたというところだろうか。特に勝った試合でも、直後に選手に直接何かを言う、というのはこの頃から多く見られるようになった。