なぜ「世界最高峰」なのか。大河新チェアマンが明かしたSVリーグという一大改革

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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

J、Bリーグでの先例のあるライセンス

大河チェアマンの話がお金や経営中心になるのは当然のことで、冒頭の自己紹介でも話されてましたが、彼は元々バンカー(銀行員)。そのときに縁あってJリーグに出向し、銀行に戻ったもののスポーツの世界に携わりたいと思い退行して再びJリーグに入り、常務理事になってライセンス制度の整備にも取り組んでいます。

その後Bリーグに転じて二代目のチェアマンに就任していますが、どうやらJリーグ時代に初代チェアマンの川淵三郎氏に見込まれ、その後彼がBリーグに移ったのもあって引っ張られていったというところでしょうか。

ちなみに、ですが、先日「異端のチェアマン」というJリーグの村井前チェアマンの、Jリーグ再建に関する書籍(注:上記リンクにアフィリエイトは仕込んでいません)を読んだときに、当時財務を担当する専務理事だった大河氏が登場しています。それによると、順風満帆に見えるJリーグですが2013年は大河氏曰く「当時のJリーグ本体にはカネがなかった」と。放映権、広告収入も頭打ちの中で加入するクラブだけは増えていったので、一クラブへの分配金が目減りしていくという悪循環に陥っていたようです。

それをきっかけに二ステージ制の復活(放映権収入増)、そして後のDAZNとの契約につながっていったと思いますが、全てに大河氏が関与していたかはわかりません(DAZNは退任後なので違うでしょう)。ただ、Jリーグにお金がない時期があったことにびっくりしましたし、お金がないのは今のVリーグも同じなので、当時のいわば立て直した経験を活かそうとしているのかな…とは思いました。財務担当としてJリーグ再建に携わったことは間違いないですから。

ちなみにたびたび出てくるライセンスですが、J・B両リーグとも結構細かいんですよね。Jだと収容人数だけでなく着席できるイスの数とかトイレの数、BだとB1の場合VIPルームの設置まで規定されています。Bはまさに一大改革の最中なのでこんなサイトもあるのですが、いずれSVもこういうのが標準になっていくかもしれません。

【公式】REGULATION | 「B.革新」特設サイト | B.LEAGUE(Bリーグ)
クラブ・アリーナを軸に地域が発展するための審査基準を設定。B.LEAGUEは世界一型破りなライブスポーツエンタメへ。国内プロスポーツ全体の発展を牽引すべく、2026年に向け新たなリーグのフォーマット構築を始めます。

話がそれますが、VIPルームの設置については批判しているバレオタも見かけました。何で必要なんだ、そんなことにお金を使うな、と。私なりの解釈ですが、これはホスピタリティのためですね。スポンサードしてくれる企業のためでもありますし(それだけのもてなしを受ければスポンサーを続けようと思う)、野球ではおなじみの、シーズンシートとして企業が福利厚生などに使える。さらに一般販売すれば高額チケットとして収入も増える。経営面でも大事なことです。ラウンジ利用や特別体験のついたVNLの高額シートがいい例ですね。

話を戻します。「異端のチェアマン」によるとJリーグのライセンス制度は大河氏が設計したそうですし、それをBリーグでも取り入れたのではと思います。そして、リーグやチームが発展していくため、だけでなく、これも大事なことですが倒産しないための経営目標、をライセンスという形ではっきりさせたのはバンカーの発想という印象です。

例えば、地元と一緒になってアリーナを作っていくときも、何となく作るのではなく「B1に上がるためには5000人以上のアリーナが必要なんです」「VIPルームがこれだけ必要なんです」と数字がはっきりしていればそれを元に設計しますし、逆に「そんなに大きな箱はいらない」と地元から反対された場合どう説得していくか、を知恵を絞って考えなければならない。

それはつまり地元と汗をかくということなんですよね。共同作業というか。もちろんそれにはスポーツ庁の「スタジアム・アリーナ改革」という後押しもありますが(補助金が出るはずです)。一方でライセンスは都度改訂されるのでどんどんハードルが上がっていき、ついていけないチームが出てくるのも事実ですが、それは逆に、借金や過剰投資で無茶をするのではなく(赤字が続けばライセンスもはく奪されます)、その規模にふさわしいディビジョンで生きていきなさい、その方が幸せになれる、ということだと思います。

地域と汗をかく、という点ではこれも一つのケースですよね。チームが地域から必要とされているか、のバロメーターにもなるわけです。

ライセンスはものすごく簡単に言えば、大きな家に住みたい、高い車を買いたいと思ったときに、まず自身の年収を考えてください、と。無理して買って多額なローンで苦しむ可能性があるのであれば、収入に合った小さな家にしなさい、ということ。それでも大きな家に住みたいのであれば今のままではダメだからもっとお金を集めてきなさい。その目安がライセンス、ということです。審査であり、法律ですね。

元々ライセンスって、身の丈に合わない放漫経営をしてチームが倒産して消滅することを防止するため、という側面の方が強いと私は思います。3月のバレーボール学会でVリーグのライセンス担当の方の話を聞きましたが、役所のような審査機関をイメージしていたのですが実際は「これをクリアするためにはこれをしてみたら」といった、経営コンサルタントという印象を受けましたし。

私の話はこれくらいにして、カンファレンスの話に戻ります。