なぜ分社化したのか?
2023年12月に一般社団法人ジャパンバレーボールリーグ(JVL)から発表された20231220_第19期第7回理事会後記者会見資料によれば、SVに限らず(これ大事)今後はこんなライセンス交付基準が課せられます。
- 母体会社の法人格:取締役会設置株式会社(SV:2027-28~必須 V:2030-31~必須)
- クラブの経営責任者:代表取締役の設置。バレーボール事業未法人化クラブの場合(つまり実業団形式)はクラブの運営・事業・資金決済の専決権限を有する所管役員または同等の役職者の設置
これについては下記の大河バイスチェアマン(当時)のインタビューがわかりやすいです。
まずは運営会議に出るメンバーの要件を引き上げようと思っています。親会社の人だとしても、部長以上とか、できたら取締役以上とか。
「Bリーグの純粋の稼ぎが62億円。Vリーグは3億程度」選手、クラブ、リーグの観点で大河副会長が語る、バレーボール界の現状
(中略)
「会社に持ち帰って聞いてくる」みたいなレベルで止まるなら、実行委員会をやる意味もないですよね。
なおこの記事には、JリーグとBリーグは実行委員会の出席を「代表権」を持った人に限定しているという記載もあります。大河氏は両リーグにも中心人物として携わっていただけに、いずれJVLもそうしていくでしょう。
これをわかりやすく言うと、商談でよくある「これは私の一存では決められませんので、いったん会社に持ち帰って検討します」をなくしてスピードアップを図るということですね。身近なケースで言えば高価な買い物をするとき、店員さんと値引き交渉していて「今日は店長が不在で判断できないので、また明日お越しください」と言われたらイヤですよね。そういうことです。
東レは従来だったら、Vリーグの実行委員会に決裁権を持つ本社の幹部クラスが出席する必要に迫られていたわけですが、分社化でそれが必要なくなった(幹部クラスともなれば他にも大きな仕事がたくさんあります)。これはSVリーグに関わっていく上で非常に大きいわけです。
もっとも上述の通り、JVLとしては現時点での分社化は求めていないので、分社化していないチームに本気度が足りない、と言っているわけではないです。
さて。改めて東レアローズ株式会社設立のプレスリリースを読むと、いくつか気になる点があります。以下抜粋します。
- 「これまで東レの実業団チームの位置づけであった東レアローズ男子バレーボール部、同女子バレーボール部を引き継ぎ、バレーボールクラブとしての運営を行います。」
- 「これまでより一層、スポーツの振興や地域社会への貢献・共生といった姿勢を強くしたクラブチームとして、SVリーグに参加してまいります。」
- 「今回の新会社の発足は、そのような東レの哲学をさらに強く推し進めるものであり」
- 「今後も、企業理念である『わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します』の体現に努めていく所存です。」
私なりのポイントは下記です。
①「東レの実業団チームの位置づけであった」と過去形のところを見ると、従来の実業団形式からの脱却であるとはっきり明示している
②部ではなくクラブチームという言葉を使い、「脱東レ」とは言わないまでも、地域社会への貢献などをより推進する意気込みが伝わる
③とはいえ東レ株式会社からバレーボールを切り離すものではなく、企業哲学をさらに推し進め、東レの企業理念の象徴的な存在にしていくとしている
とまあ、非常に意欲的なわけですね。とはいえプレスリリースなんてこんなものでは(前向きな言葉に終始)と思って久光が分社化したときのリリースを見たら、そこまでのことは書いてなかったので、アロともにとってはとても心強い文面になったと思います(これは企業の文化なのでチームは関係ないですが)。分社化ってどうしても「切り離される」=「手を引く」イメージもつきますからね。
ちなみに先例ということで、たびたび引き合いに出してすみませんが久光の分社化と比較すると、久光の資本金1000万(埼玉上尾も同額)に対し東レは5000万ですから、男女二チーム分としてもけっこうデカイ規模と言えます。資本金=本気度というわけではないですが、企業を調べる上での重要な目安ではあります。あと、社長は九州支店長からの異動ですから、社としてもそれなりに重要な人物を送り込んだと言えると思います。
では、なぜこの時期の設立になったのでしょうか。