そして、私はダブルレンズズームキットの一眼レフを持っていました。たまに数ヶ月に一度仕事でアーティストのライブを撮るときに使うくらいで、ほとんど宝の持ち腐れでした。
2016年11月12日の船橋大会のチケットを私は取っていたのですが、そうか、せっかく一眼レフがあるのなら持って行ってみるか。でもバレーボールの試合でよく見かけるようなバカでかいレンズじゃないから大した写真は撮れないだろうけど。
ということで初めて持っていった試合で撮った写真がこれです。
ちなみにこの試合はエンドの自由席で必ずしもいい席とは言えませんでした。でも、こんな写真が自分でも撮れるんだ、というのは驚きでした。そして何よりこの写真です。
私は、木村沙織選手のレシーブ時のルーティーンがいつも気になってました。息を抜いて両手を右に動かして、その後軽く左右にジャンプする、というものでしたが、この角度から撮ると、まるでサーバーと一対一で日本刀での斬り合いをしているように見えます。
でも、後で何かのインタビューで木村沙織選手が、レシーブ時はサーバーの呼吸に合わせているとおっしゃっていたのでその見方もあながち間違いではなかったわけです。
写真を通してそんな発見もできるんだなと思ったわけです。しかも、スーパーシートみたいな席でなくても、そしてカメラに全然詳しくなくても(今でも詳しくないです。絞り値とか適当です)、ダブルレンズズームキットのレベル(これでもそれなりのレベルですが、単体で買う必要のある立派なズームレンズではないという意味で)でもこれだけの写真が撮れることに気づき、この船橋大会以降私は毎試合必ずカメラを持っていくようになりました(もちろん、木村沙織選手のラストイヤーという側面もありましたが、それが主目的ではなかったです。東レ以外の試合も撮ってるので)。
あと、NECレッドロケッツという、撮った写真が湯気が出ているような(なわけない)熱い熱い写真が撮れるチームに出会えたことも大きかったです。詳しくは過去のこちらのブログに。
今になって思えば、カメラ否定派だった当時の私は一つ大きな誤解をしていたと思います。
「カメラで撮っている人は試合を見ていない」なんてことはないんだと。
これは最近撮り始めた私の感覚なので、全てのカメラ撮影者の意見を代弁しているわけではない(と思う)のですが、わかりやすくいえば、ズームレンズという双眼鏡で試合を見ている感覚です。だから、試合、ちゃんと見てます。
そりゃ、得点が決まって選手が歓喜に包まれているときに、格好のシャッターチャンスとばかりにバシャバシャ撮っていたりはします。
でも、誰しも選手の喜んでいる姿を見たいですよね?
そしてその姿こそ、何より選手の、そしてバレーボールというスポーツの魅力が詰まっていると思いませんか?だから撮るんです。というより、引きつけられてしまう感じです。私自身は歓喜に包まれているときにもっと選手を祝福してあげなければとは思ったりもしますが、撮りながらでも声は出せますし、たまにカメラを置いて肉眼で試合を見るようにはしています。
そして何より、今はSNSで拡散できるメリットがあります。バレーボールの魅力を伝え、少しでも多くの人に関心を持ってもらって一度見に行こうと思わせるには、言葉も大事だけれど一枚の写真が何より雄弁に語ってくれるわけです。正確には、一枚の写真とそれを補足する言葉、です。