そしてもう一つ。新生Vリーグの一つの特徴は、ファンの拡大だと思います。従来のVリーグは、実業団という側面から親会社の社員が観客の中心、というケースが多かったわけです。私がかつていたNECにもスポーツ後援会というのがありました。今、一般の人も入れるファンクラブを持っているのはNEC、久光、岡山、埼玉上尾、デンソー、トヨタ車体、KUROBEの7チーム。ないのはPFU、JT、日立、そしてわが東レです。
新生Vリーグの方向性を一言で言うと、私はチームを企業のチームから地域のチームにすることだと思っています。ただ、それは簡単なことではありません。だって選手たちの給料は企業から支払われています。選手たちは企業の一社員として入団、というより入社しているわけです。私は「V.LEAGUEチームの顔」という選手名鑑が好きなのですが、ここには所属企業での所属部署が記載されています。例えば古賀紗理那選手はNECの社会公共ビジネスユニットの所属です。東レの選手は全員事務部の所属です(木村沙織さんが選手の時はプロ契約だったのか、この部分は「-」になってました)。
現在、企業のチームではなく親会社を持たない独立採算のチームは女子では岡山だけのはずです(ちなみに上述の「所属企業での所属部署、KUROBEの欄はびっくりしました。これはここでは書かないでおきます)。独立採算でやっていける、つまり選手が企業の一社員ではなく一人の選手として給料をもらう、というのはまだまだVリーグでは実現できない世界なわけです。
ただ、とはいえ地域のチームを目指すという取り組みとして、前述のトヨタ車体のホームゲームの作り方は理想的だったと思います。あるべき姿といっていいでしょう。一方で、ファンクラブも持たず、企業のチームという側面の強いチームもあるわけで、その傾向の強い東レのホームゲームはどうなるのか、という楽しみはありました。いや、楽しみと言うよりも「特に変わっていないだろう」という安心感と言いますか(笑)。変化も大事だけれど変わらないことも大事だったりするわけです。原風景と申しましょうか。
2年ぶりに訪れた大津の街、そしてウカルちゃんアリーナ。そこはほとんど2年前の光景と変わっていませんでした。滋賀県バレーボール協会の皆さんの頑張りぶりや、子供率の高さ(これは他のホームゲームと比べても屈指の高さだと思います)も相変わらずでした。アリーナの前に出ていたキッチンカー屋台も相変わらずだったなあ。唯一2年前と違ったのは、試合中に唐突に入った県知事の来場アナウンスがなかったことくらいじゃないでしょうか(笑)。
ただ、これはホームゲームに限った話ではないのですが、今季から(のはず←昨季は見られなかったので)、東レアローズに一つの変化がありました。それは、グッズを売るようになったことです。2年前はネット通販と、ホームゲームでのみグッズを販売してましたが、今年は全試合でグッズを販売しています。
※ちなみに今回ホームゲーム限定で、ベストを販売しました。なにせユニクロのヒートテックの素材は東レですから、あたたかさは保証済みです(笑)。
これは個人的にはとても大きなことです。従来、試合会場に行ってもどのチームのブースはありましたが、それは基本的にそのチームの所属する企業応援団のための受付ブース。そこでチケットとハリセンなどの応援グッズを応援団に配るわけです。つまり、それ以外の一ファンは疎外されていたわけです。
それが、東レアローズが来ているどの会場に行ってもグッズが買えるというのはものすごく大きな変化だったと個人的には思います。グッズが買えるのはもちろんですが、そこにチームとの接点ができるんですよね。そこにはチームスタッフがいるわけですから。「昨日の試合はよかったですね!」とか、そんな話ができるだけでも大きいんです。だってそこにいるチームスタッフだってチームの一員なわけですから。