23/24 マイVリーグアワード~会場編~

マイVリーグアワード
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

最優秀広告賞:佐賀県「佐賀さいこう!DAY」(久光スプリングス)

会場内の広告など、印象に残ったスポンサー企業などを表彰するこの賞。今回選んだのは久光スプリングスの開幕戦の佐賀県presents「佐賀さいこう!DAY」です。

どうやらこの「佐賀さいこう!DAY」は元々Jリーグのサガン鳥栖、Bリーグの佐賀バルーナーズといった、佐賀県に本拠地のあるチームで毎年開催されてきたようで、それが今回、久光の佐賀移転ということで久光でも初開催、ということのようです。できたばかりのSAGAアリーナでの初のVリーグの試合、というのもあってこのタイミングで協賛試合にした佐賀県もさることながら、Vリーグ側もこの週は佐賀大会だけにして特別感を与え、かつ注目を集めさせた印象もありますね。

しかもこの「佐賀さいこう!DAY」ではSAGAアリーナ一帯で「SAGAサンライズパーク ストリートフェスタ」を開催し(このフェスタは前週でも佐賀バルーナーズの試合でもやってました)、さらに市の中心部で開催されていた「佐賀さいこうフェス」と結果的にセットにしていたんです。どちらも主催は佐賀県で、佐賀駅を挟んでの南北での開催。つまり、街ににぎわいを作り出していたんですね。佐賀駅では選手のアナウンスが流れ、駅職員もユニを着てましたから(これは、バスの運転手さえユニを着るという、福岡におけるソフトバンクホークスの鷹の祭典を参考にしたはず)。

その結果もあって、Vリーグ女子のリーグ戦最高来場者記録を更新する7239名。と書くとすかさずタダ券が…と言われそうですが、確かに佐賀県民が1000人鳥栖市民が日曜と合わせて2000人(翌日は鳥栖市民デーとして開催)と、鳥栖市民を半分とすれば計2000人が無料で来ていたことにはなりますが、それを差し引いても5000人ですし、無料だからといって誰もが来てくれるわけではないですからね。というのと、

その後の、開幕戦以来の開催となった2月の佐賀大会。いつもの感覚で開場時間にフラッと行ったらびっくりしたんですよね。この待機列の長さに。

500人は並んでいたんじゃないかなあ…しかもそれがご家族ばかりで、いかにも「地元のチームの試合を見に来ました」という、バレーボールファンというよりは「おらが街のチームを応援」という方々ばかりで。長蛇の待機列のできる試合自体少ないですが、いかにも「Vリーグを見に来ました」という層ではない方々ばかりの列、というのは驚きでした。

私なりの考えなのですが、10月の開幕戦を見た人が「また見よう」と思ってくださった結果なんじゃないかな、と。開幕戦の試合後の挨拶で大竹キャプテンが「次の佐賀でのホームゲームは2月で」と言ったときに場内が「えっ(そんなに先?)」みたいな空気だったんですね。もっと見たいのに、みたいな。その飢餓感も来場動機になったんじゃないかな。「待ってました!」と。だって、サガン鳥栖も佐賀バルーナーズも隔週とは言わないけれどそれくらいのペースで試合してますからね。逆に言うとSVになるとそれくらいには増えるはずです。

2月は無料招待がなくても5085人(11日)。って開幕戦の無料招待2000人がそのまま来なくなっただけじゃないかって思われるでしょうが、まあそう思う人はそう思っていただければよいのでは。ただ、開幕戦と違ってフェスタも開催してませんからね。

そして、この「SAGAサンライズパーク ストリートフェスタ」がなかなか面白かったんです。まず、佐賀駅からSAGAアリーナまでの徒歩15分程度の道中に、うちわづくりのブースや等身大パネルを置いたり、楽しめるスポットを用意していたんですね。個人的な感覚としては距離は岡山駅とジップアリーナと同じくらいかな…と。バスもある点も似ています。

また、SAGAアリーナではビアフェスも開催していたんです。そして石井優希さんを呼んでのトークショーや、MCのTOM Gさんも来て応援練習をしたり、試合を盛り上げようとしてました。

「SAGAサンライズパーク ストリートフェスタ」は、試合を盛り上げる以外にもう一つの狙いがあったのではと思います。それは、公共交通機関での来場促進。SAGAアリーナ周辺には駐車場がなく、違法駐車が問題になっています。だから、徒歩で来るとこんなに楽しいよ、そしてお酒も飲めるよ、と(飲酒運転になるので必然的に車は使わない)。SAGAアリーナは入口だけでなく試合が見えるアリーナ内の通路でもビールを売ってましたし、「飲めるアリーナ」でしたね。私は試合では絶対に飲みませんが、初めて飲みながら見たくなった会場でした(笑)。

アンケートもやっていたのですが、アリーナまでの道中にいかに楽しさを演出するか、ということを考えている印象はありましたね。上述のアルコール販売と含めて、非日常の空間だ、というのを押し出すことで結果的に車での来場を減らす狙いもあったと思います。ただ歩くだけだと苦痛だし。ゆくゆくは選手行きつけのカフェとか、そういう名物ができるといいんでしょうけど。

なんで佐賀県はこんなにスポーツを通しての地域振興に積極的かというと、これは間違いないと思いますが、今年国体(国スポ)があるから。まあ後、これは知事の姿勢もあるのかもしれませんね。何せ、プロ野球チームもなくJリーグとBリーグしかないわけで、これらを通して県を盛り上げようとするのは自然な流れかなと(要は人口流出を防ぎたい)。人気ゲームとのコラボ企画の「ロマンシング佐賀」とか、島耕作を副知事にするとか、そういう変わった企画にも積極的ですしね。だから私、二回行って佐賀県好きになりましたもの。

ちなみに島耕作の副知事就任を知ったのは、2月の佐賀大会で来場者に無料でTシャツを配ったことから、なので、単発のイベントは組み合わせることでより届くようになる、という好例なんですよね。逆に島耕作ファンがそれで久光というバレーボールチームを知るかもしれないし。

そういう企画の組み合わせ方が佐賀県は非常にうまかった。前述のとおり「SAGAサンライズパーク ストリートフェスタ」と「佐賀さいこうフェス」の同時開催もそうですし。単発より組み合わせる方がよりクリエイティブですし、それはつまり最先端のイケてる県、という印象にもつながりますよね。

あと、2月の佐賀大会は、前日に地元のテレビでは新鍋理沙さんが解説をしたり、帯番組で毎日選手が登場したり(荒木選手によるロケ企画もありました)、スタジオのキャスターたちが久光のシャツ着たりと盛り上げてました。

開幕戦で、青一色に染まったアリーナを見て、大竹キャプテンはじめ選手たちは何を思ったでしょうね。本当に久光はいい移転をしたと思いますし、このSAGAアリーナの光景はSVリーグのモデルケースになるんじゃないかな。