THIS IS HOME~V1に舞い降りたKUROBEアクアフェアリーズ~

KUROBEアクアフェアリーズ
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

1/5、6に富山県・黒部市で行われた新年一発目のVリーグ。この試合は地元が本拠地のKUROBEアクアフェアリーズのホームゲームでした。

私がこのKUROBEアクアフェアリーズというチームに興味を持って、ホームゲームに足を運んだのは主に二つの理由です。

・V1リーグに「参入」してきた

ご存じの通り、今シーズンからVリーグは、これまでのV・プレミアリーグとV・チャレンジリーグから、V1、V2に改編されました。その際、プレミアリーグは8チーム制だったのが、V1は12チームにまで拡大されました。プレミアリーグは8チームで、かつチャレンジリーグの上位2チームが入れ替え戦次第でプレミアリーグに昇格できるという点では、いわば10チームは元々プレミアリーグに入れるだけの力のあるチーム、と言えます。

そこにさらに2チームを加え12チームになったV1。そこに加入を認められるのはS1ライセンスを取得していることが条件になるわけです(下記サイトではV1ライセンスとなっているので今はそうなったのかもしれませんが)。

バレーボール Vリーグ コーポレートサイト
Vリーグコーポレートサイトです。

つまり「V1に入れるチームを2つ増やすから入りたい人、手を挙げて~」になったわけです。

ところがこれ、入れるならみんな入りたい、というわけではないんですね。特に当初V1に加入するはずだったフォレストリーヴズ熊本が経営難で解散してライセンスを返上しても、他にライセンスがあった二チームは断り、結果V1が11チームという奇数、V2は12チームといういびつな形で新シーズンはスタートしました。

そのチームが断ったのは急すぎたというのもあったでしょうが、チームの経営状況などを考えると今の段階でV1に上がるのは後々経営的にきつくなるという判断もあったのではと思います。V1になればそれなりの会場規模が求められ、かつ、運営費用も上がります。それがちゃんと回収できるのか(できなければクラブが消滅する可能性もあるわけです)。

何が言いたいかというと、今回のタイミングでV1に参入するというのはそれなりの覚悟が必要、ということです。まずその点でKUROBEアクアフェアリーズに興味を持ったわけです。

・母体が「黒部連合」

私は「V.LEAGUEチームの顔」という選手名鑑が好きで、毎年買っています。一つは選手の直筆のメッセージが書かれている点なのですが(木村沙織さんの字は本当に女子力が高かった…)、そこには各選手の所属部門が書かれているんです。

Vリーグのほとんどのチームは、母体となる親会社があります。つまり、選手たちはそこの社員なわけです。東レアローズに入団、ということはイコール、東レ株式会社に入社ということなわけです。先日内定選手として発表された石川真佑選手は、東レ株式会社の新入社員でもあるわけです。ちなみに全日本だと新鍋理沙選手は厚生部(久光の選手は全員厚生部の所属)、古賀紗理那選手は社会公共ビジネスユニット(ユニットと言うのがNECらしいな…)、黒後愛選手は事務部(東レは全員事務部の所属)、だったりします(JTが「女子バレーボール部」とはっきりバレーボールを明記しているところはJTのいわば矜持ですね)。

※そして岡山は親会社を持たないクラブチームなので、所属部門欄は空欄です。

NECレッドロケッツの選手たちが事業所で挨拶運動に参加したり、東レアローズの選手が本社を訪問、なんてケースがあるのは、選手たちが社員だからです(そして基本的に応援席に陣取るのも社員ですから、つまり社員仲間を応援しているわけです。そこがプロ野球やJリーグと違うところですね)。

ではKUROBEはどうなっているのか。めくってびっくりしたんですね。例えば平谷里奈選手は北星ゴム工業、和才奈々美選手は富士ゼロックス北陸、アールブレヒト選手はYKK…他にもトヨックス、銀盤酒造、第一建設、新和工業…なんと、所属部門ではなく所属企業、だったんですね。

つまりこれは、黒部の企業連合、なわけです(ほとんどが黒部の会社ですが、一部魚津もあります)。Vリーグでは岡山がスポンサー一覧を掲示してますが、あれはつまり岡山シーガルズに出資している形なのですが、KUROBEはスポンサーが選手を雇用しているわけですね。サイトでもはっきり「スポンサー(選手雇用企業)」とうたっています。

パートナー一覧 | KUROBEアクアフェアリーズ

一社でVリーグのチームを抱えるのは費用面でも大変なわけですが、連合にする形でチームを持つというのは今後Vリーグがもっと全国に拡大していく上で大きなモデルケースなのでは、と思ったわけです。人口が4万人しかいない黒部市でもVリーグのチームが持てる、というのもありますし、それ以上にVリーグの歴史なんて、親会社の経営難によるチームの譲渡&解散の歴史ですから、一社に依存しているのは解散の危機と常に隣り合わせなわけです。

そんなチームを一度見てみたい。そう思って私は黒部に向かったわけです。あともう一つこのチームに興味を持った点があるのですが、それは後のお楽しみみんということで。

東京から北陸新幹線で2時間半ほどで黒部宇奈月温泉駅に到着。そこからバスで黒部駅に行き徒歩で20分ほどの所にKUROBEアクアフェアリーズのホーム、黒部市総合体育センターはあります。富山に来たのは20年ぶりくらい。そのときは富山市を軽く散策した程度なので、ましてや黒部に来るなど初めてのこと。Vリーグを通して、行ったことのない場所に足を運ぶというのもVリーグの楽しさです。

まず入場時にびっくりしたのが、お子さんを抱えた女性スタッフが入場口にいらして券のもぎりなどをしていたこと。そういう方々がKUROBEアクアフェアリーズを支えているわけです。あと、たまたま新鍋理沙選手が通路を歩いているのが見えたのですが、「あのテレビで見た全日本の新鍋選手がこの体育館に来た!」というのは、地元の人たちにとっては何より貴重な経験になるのでは。これもVリーグが全国で開催される意義だと私は思います。