THIS IS HOME~その先を翔ぶ岡山シーガルズ~

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⑫競合の出現

岡山シーガルズはモデルケースだと書きましたけれど、ただ、岡山だって順風満帆というわけではありません。

ジップアリーナをこれだけ使える理由は、実は岡山にはBリーグのチームがないんです。他のV1女子はたいていはアリーナをBリーグのチームと共同利用(もっともBリーグの方が開催数が多いので取るのも一苦労ですが)しているので、ホームゲームを増やすのは簡単ではないし、だから他の会場を使う必要がある部分もあると思います。

そんな岡山も、2019/20からトライフープ岡山というチームが、B3リーグ加盟に必要なライセンスを確保したのでおそらくジップアリーナを使い始めると思います。

また、今回奉還町商店街を歩いて気づいたのですが、2年前になかったものがあったんですね。Tリーグ「岡山リベッツ」です(こちらはジップアリーナは使っていないのですがでもいずれは使うかもしれません)。

これは個人的な印象なのですが、岡山市はスポーツを通して街を盛り上げようという意識がとても強いと思います。Jリーグのファジアーノ岡山、そしてVリーグの岡山シーガルズ…ただ、確かに岡山シーガルズの露出は大きいけれどそれは優遇されているのではなくそれしかないからであって、BリーグやTリーグと並列に扱われると思います。まあ自治体が特定のリーグに肩入れすることはないので当然ですが。

つまり今までは1/2だったのが今後1/4になっていくわけです。

※ちなみに岡山には独立リーグ含めて野球チームもないので、その他のスポーツが盛り上がりやすい土壌はあります。

個人的に気になる点もあって。奉還町商店街の巨大看板が、昨シーズンのままだったんですよね。

あと、2年前は岡山市内の中心部の居酒屋とかでもシーガルズのポスターをけっこう見かけたのですが、今回ほとんど見かけなかったんですよね。

理由はわかりませんが、岡山シーガルズも決して順風満帆な存在ではないというのは今回感じたことです。

※と思っていたら、ツイッターでご指摘をいただいて、なんとなんと、岡山シーガルズの専用拠点を作る話が進んでいました。岡山市役所本庁舎の建て替えに合わせ、「日本一女性が輝く」をコンセプトに、地下1階、地上4階建てで、5000人収容の国際試合ができるメインアリーナを作るのだと。

しかもこれ、岡山大学や経済団体などでつくる協議会が提言して進めているもので、要は官民一体となって進めている話なわけです。しかも夢物語ではなく事業計画を作るなど本格的に進んでいる話です。いやあ、次元が違うよ岡山…(2019/1/21追記)

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⑬実は岡山出身者ゼロのチーム編成

試合前、公式練習の時にベンチ入りメンバー(登録メンバーだったかな)が紹介されますけれど、そこで地元出身選手は「○○市出身」という補足アナウンスが入るんですね。この岡山大会でも東レアローズの小川愛里奈選手やお姉さんのJTマーヴェラスの小川杏奈選手、そしてKUROBEアクアフェアリーズの平谷里奈選手が紹介されていたのですが、岡山シーガルズはゼロでした。

ホームチームだからわざわざ紹介することもないということでアナウンスされなかったのかなあと思ったのですが、選手名鑑見たら、なんと、岡山シーガルズに岡山出身選手はいない!んですね。

これはDAZNで知ったのですが、小川愛里奈選手は岡山市出身なので岡山シーガルズはとても身近なチームだったと。バレーボールが身近にあることでバレーボーラーになりたいという夢を持ちやすくなるんだなあと思ったのですが、そういう人たちが岡山シーガルズには入らないというのは悲しいな…と。やっぱり地元のチームに入って欲しいので。しかもせっかく市内に、小川姉妹や石井優希選手を輩出した就実高校があるのですから、就実→岡山シーガルズ入団、というパイプができるのが理想なのに…

でもそうならない理由は個人的には、そういう他のチームに入れるような力のある選手はそもそも岡山シーガルズは獲らないという方針があるのではないでしょうか。選手とその保護者側からすれば他のチームからオファーがあったとき、契約金とかも気にするでしょうが、何よりその後の雇用も気になるはずです。バレーボールをやめた後も社会人としてやっていけるのか。東レアローズなら東レに入社するので引退後も、バレーボールに関われなくても社員として働けます。

岡山シーガルズは親会社がないのでそれは非常に難しいわけです。そうなれば選手側は岡山に行こうとは思わないでしょう。条件面では勝負にならないのではないでしょうか。

岡山シーガルズはいわば学校というか、もっと頑張ってバレーボーラーになりたい、という思いのある人を徹底的に鍛えて選手に育て上げるという完全なる育成クラブなわけです。だって選手数半端なく多いですしね。プロ野球で言う育成枠という印象です。河本監督というスペシャリストがいるからこそ成立しているのかなと思います。この監督だったら安心して娘を預けられる。保護者の信頼は半端ないと思います。

しかも岡山は外国人も獲らないし、他チームから選手を獲得することもないわけです(栗原恵選手が加入したことはありますがそれくらいでは)。

そういう事情はあるにしても、なんか切ないなあ…と思いました。

ただ、そう考えると岡山における山口舞選手、そして宮下遥選手の存在って大きいですね。あの二人を輩出した岡山シーガルズ、と言えるわけですし。そして何より円陣での河本監督って本当に面白いというか。厳しくもあり、やさしくもある。選手にとっては親以上の存在じゃないかな。

とつらつら書いてきましたが…

今回岡山シーガルズを見て、一番感動したのはこれ、なんですね。