あの試合の翌日。試合前に会話を交わしたその人に御礼とお祝いのLINEを送った。その返信で知ったのだが、土曜の試合後、みんなで思いの丈を語り合い、この日は応援を心底楽しもう、という話になっていたのだという。私なりの解釈だが、応援しなければ、といった義務であり使命感からいわば解き放って、思い通りにやろう、楽しもう、ということだったのではないか。確かに勝てないチームを応援するというのは、勝たせることが使命と考えていれば、無力感にさいなまれるだろう(一緒にするのはおこがましいが、私だって背中を押すために新聞を作っているので、無力感はあった)。
でも、いったんそこから離れて…ということだったのかもしれない。
それはともかくとして、そんな気持ちで会場に向かって、まず応援団席の掃除から始めたのだとか。その話を聞いて、ふと思い出した。試合前に二階に行ったときについ撮った、あの写真のことを…
試合前、静かにお客さんを待つ応援団席…それはどこか、高級フレンチレストランの開店前のような、凛とした佇まいを感じさせた。でも、それだけでわざわざシャッターを切ることはなかっただろう。よく応援団席に挨拶に行く私にとってはおなじみの光景だからだ。でも、そこに何かを感じたから、シャッターを切った。
この、整然と畳まれ、並んでいるジャケットは、応援団の方々が前日の試合後に回収してきれいに畳んで、そしてこの日また試合前にきれいに並べたものである。これを着てもらうことで、席が青一色になるという視覚効果がある。だからこうして試合前に席に並べている。だが、見慣れた光景がこの日はちょっと違って見えた。だから、ついシャッターを切ったのだ。
もしかしたらこれは、「楽しもう」という気持ちから、いわば原点に返ったことがこういうところにも表れていたのではないだろうか。畳み、並べるといういつもの行動に、なにか気が籠っていたのではないか。
それが、結果的に選手たちを後押ししたのではないだろうか。あの日は応援団席に座るファンも多くて、しかもいつものように他のエリアにいる子供たちを巻き込んで、応援団を増やしていったのもあったけれど、それ以上にどこか、いつもとは違う気を感じていた。
結果的にこの刈谷でのNEC戦は、上位を相手にした唯一の勝ち星であり、今シーズンのハイライトになった。順位は前年の2位から8位に大きく下がった。だが、結果的に優勝したチーム相手のこの勝利(他に敗れたのはJTと久光相手だけなのだ)は、選手たちにとっても、ファンなどそれを取り巻く人にも大きな価値があったはずだ。
このチームはまだまだやれる!
楽しもう!
あのファイナルと今は断絶していない!
等々…いろんな気づきをファンにもたらしたと思うのだが…
でも、一番はこういうことだったんじゃないかな。
「だから東レアローズファンはやめられない!」
ちなみに試合時間は、前回から58分長い130分だった。