それは、ウィングアリーナ刈谷の二階席から始まった~2024.1.21NEC戦エピローグ~

東レアローズ滋賀
all text and photographed by
Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

第一試合はトヨタ車体対デンソーの愛知ダービーとなった。トヨタ車体のホームゲームということだけでなく、刈谷市と西尾市という至近距離に本拠地のある同じ三河地区、同じトヨタグループ、お互いエースアタッカーがキャプテン、そしてオポジットにいわゆる外国人の打ち屋、という共通点も多々あり、試合は3-1というスコア以上に盛り上がった。そして予定より20分遅れた15時20分、第一試合の余韻も冷めた頃に第二試合、NECレッドロケッツ対東レアローズが始まった。

試合はいきなりNECの3連続得点で始まった。だが、「ああ、相変わらず立ち上がりの悪い…」なんて嘆く間もなくすぐに1点を返し、その後も7-11、15-19と二度4点差をつけられたものの、そこからズルズルと離されることはなく、食らいついていた。あっ、これはちょっと違うぞ?

そこにはNECの不調もあった。何が、といえるほど私はバレーボールを分析する頭を未だに持ち合わせていないのだが、前日はトヨタ車体相手にフルセットでの勝利だったし、この日はリベロのレギュラー・小島選手がベンチ外だったのもあってか、どこかチームが本調子ではないように見えた。これはNECに限らずどのチームにもそういう試合というのは長いシーズンには必ずあるし、それでも勝てるチームというのもあるわけで、たまたまそういう日だったのだろう。

試合は文字通り一進一退の展開になりデュースにもつれ込んだが、27-25で第一セットを奪った。おっ、NEC相手に一セット取ったぞ!

今にして思えば…この試合前に決めていたことが一つあった。それは、声を出し続けるということ。私は基本的にそんなに声は出さない。ここぞ、というときに出すものに価値があると思っているタイプでもあるのだが、気恥ずかしさがあるのも事実。さすがにエンドに座っていて選手がサーブを打ちに近くに来るときは声を出して鼓舞するが、ましてやこの日のようなアリーナ席───それでも二列目で十分近かったが───では、選手から遠くなるし声も届かないだろうし…と、こんなオッサンでも気恥ずかしさが先立つのだ。

だが、なぜか、この日についてはサイドのアリーナであっても、そして反対側でも声は出そうと決めていた。第二セットは逆に9-5と一度は4点差をつけたがジリジリと追い上げられ、それでもデュースに持ち込んだものの奪われた。だが、いわゆる熱戦、に、見ている私のボルテージも自然と上がっていった。サーブの時くらいにしか出さない声援も、やがてサーブレシーブ時のミドルブロッカーにまで、その対象が広がっていった(ちなみにプレー中は邪魔になるので出さないようにしている)。コトミ、走れ!マユカ、戸部!じゃなかった、跳べ!

第三セットは一転して18-25と一方的になったが、「ああ、ここまでか」と思わせる隙すら塞ぐように、第四セットは出だしから6-1とリードした。19-19と一度は追いつかれたものの、このセットも25-21とモノにして、試合はフルセットにもつれ込んだ。

…勝てる。
…いや、勝てる、じゃない。勝たなきゃダメだ、この試合は!

第五セット、8-5とリードした状態でコートチェンジを迎え、近くを走り抜ける選手たちに、自然とこんな声をかけていた。いや、叫んでいた。

「勝つぞ!」