君の名は日立リヴァーレ第三章

日立Astemoリヴァーレ
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

神戸大会が終わり、私は東京の自宅に帰るべく新神戸駅に行った。新幹線の時間はフルセットになったことを想定して遅くしていたが、試合が早く終わったので少し前倒しにしていた。

とはいえ窓側に空席のある新幹線はすぐにはなく、少し時間を持て余して駅で座っていると、そこにジャージ姿の女性たちがやってきた。背の高い外国人選手の姿を見て、ああ、バレーボールのチームだなと思った。そしてすぐにわかった。日立リヴァーレの選手たちだった。彼女たちは、地元の日立に帰ろうとしている。それは、神戸大会という出張を終えて、日常に帰る光景だった。仕事を控え、自分の住まいのある東京に帰る私と同じだった。選手たちはやがて一旦解散して、売店で買い物をしたり、つかの間の自由行動を楽しんでいた。

私はVリーグにはまるようになって、それがさらに深まっていく中で、なぜそうなったのか、その魅力がどんなものかをいろいろと考えているのだけれど、その一つがこの光景なのかなと思った。会社員である彼女たちは私たちと立場は同じだ。そして、こういう、遠征してきたスポーツチームの選手たちと駅で鉢合わせる、という光景は野球(チームと言うよりは個人行動が多い印象があるが)やサッカーでもあるのだけれど、それらとの大きな違いは、通行人が誰も気づかないと言うことだろう。今の日立に有名な代表選手はいないけれど、もしこれがNECで、古賀紗理那選手がいたとしてもここにいる通行人は誰も気づかないんじゃないだろうか。

そして当たり前だけれど私たちだって通行人からは素通りされる。だから、そんな意味でも私たちと同じなのかなと思った。

彼女たちは会社員として出張先から地元に戻る。私たちは旅行として遠征先から地元に戻る。出張か旅行かの違いはあるけれど、会社員として会社のある地元に戻るというのは何ら変わらないなと思った。

ただ、残念なのは私は東レアローズのファンなので、選手たちの地元(滋賀)と私の地元(東京)は異なる。私も自分の好きな選手たちと同じ地元に帰りたいなとふと思った。日立リヴァーレのファンがうらやましかった。私も地元のチームを応援できたら楽しいだろうなと思った。きっと、選手たちと一緒に旅をしている感覚になるはずだ。

そして新神戸駅には日立リヴァーレの濃いファンの人たちもいた。昨日たまたま出会っていろんな話をさせていただいた方々だった。彼らは、東レさんよりポイント低いのに、ファイナル8に進出しちゃってごめんなさいねといった。それは私にとっては関係のないことだった。これは機構が定めた制度なのだ。でもこういう言葉をかけてくださるのが彼ららしいなと思った。

別れ際、私は昨日言えなかったことを言った。どうしても彼らに伝えたかったこと。

あなたたちに出会ってなかったらここまでバレーボールにはまることはなかったです。

彼らはファイナル8の会場で会いましょう!と言って私を見送ってくれた(わが東レのファイナル8進出は最終日までもつれるかもしれないのだ)。それは何より心強いエール、だった。相手チームにもエールを送る。これも彼らの流儀だ。

東京に向かう帰りの新幹線。東レアローズのある滋賀事業場は車窓から一瞬で通り過ぎていった。