新人選手ということもあって、開幕時点ではOH二枠をめぐるレギュラー争いを吉野、西川、深澤各選手に次ぐ四番手(年齢的にも)という存在だった谷島選手。だが、開幕から劣勢が続く中で流れを変えるために起用されることが自然と増えた結果、スタメンでの出場も増えるようになった。
彼女の何よりの良さは、恐れず、ためらいを感じさせない思い切りのよさ。劣勢とは行き詰まりということであり、途中出場の選手に何より求められるのはそういった悪い流れを変えること。その点で彼女の思い切りと明るさは、途中出場にはうってつけだった。うまくいかない、と悲しむ姿はアロともでなくてもこれ以上見たくない。結果はダメでも「自分は思い切りやった」「次こそは」と立ち向かう姿を見たいのだ。
この日の彼女もそうだった。得点時に気持ちよさそうに両手を広げて仁王立ちしていたが、それはきっと、5000人を超えた最新鋭のSAGAアリーナの大観衆の中でプレーする楽しさもあったのだろう。そんな正直な気持ちがあふれているのが彼女らしかったし、引退を発表していた井上奈々朱選手の最後のプレーに次ぐ、ある意味この試合のハイライトといえた。
私は、前述の記事で、サマーリーグを見て今シーズンの東レに必要なのは太陽だと書いた。チームとして負のループに陥ったとき、あるいは陥りそうな時にそれを食い止められる存在…。選手以上に白井さんも堀川さんもチームを去ったことが何より不安だったのだが、真鍋くるみ選手と並んで彼女が太陽として輝いてくれた。おそらく本人もその役割を自認していたと思う。途中出場するときは元気よく入り、手を叩いてボールを要求し、得点を決めたらガッツポーズして喜ぶ…
ただでさえ勝つチームから勝てないチームになった中で、メンタルが崩壊してもおかしくない中、それを食いとどめてくれたのは彼女だった。私にとって彼女は救いであり、希望だった。
とはいえ彼女一人で傾いた流れを変えるのはとても無理で、この日の試合は0-3とあっさりと負けた。だけれども、間違いなくこの日佐賀にいたアロともは、来てよかったと思ったはずだ。SAGAアリーナを埋める5000人の大観衆、そのほとんどが地元・久光ファンの中、たとえ声がかき消されようとも、音響が使えたことで精一杯後押しはできたはずだからだ。
東レアローズの今シーズンは、いつもより早く、この佐賀で終わった。