ArrowStart over~東レアローズ23/24ファイナル~

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

「応援団席に入らせてください!」

2023年10月29日、ジップアリーナ岡山。前日の開幕戦・JTマーヴェラス戦を1-3と落として迎えたトヨタ車体クインシーズ戦。アロともの女子たちがそんなお願いをしてきたという。応援団席はいわばチームの関係者席なので(チーム受付は基本的に関係者にチケットを渡すためにある)、誰でも入れる席ではない。その席で起きたことはチームが起こしたこととみなされる。過去トラブルを起こして、出入り禁止になっている人もいる。応援したいから、ではなく、別の目的で入ろうとする人もいた。

さらに言うなら、選手に気づかれたいのなら、応援団席は遠い。つまり何が言いたいかというと、選手を大声で応援したくなったから、応援団席に入れないかとお願いしてきた、ということだ(結果的に入ることができたという)。

今にして思えば、これが今シーズンのアロとも、だったのではと思う。声を出すのではなく「大声」を出して、「みんなで」応援したい。それが、前日の開幕戦を見ただけでそういう思いが芽生えていたわけだ。

なぜアロともがそうなったか。それは、これまで述べてきたチームの状態もあるけれど、何よりこれが大きかったのではないか。

セナを支えたい

開幕戦を見て、今シーズンはいわば、いばらの道を一人歩く関選手の姿が見えた───と考えるのは大げさか。

開幕二連敗の後、つがる市で行われたホームゲームでは二連勝したものの、とはいえ結果的に東レより下位になった岡山とアランマーレ相手のもの。その後の大田大会の日立Astemo、埼玉上尾戦での二連敗で、今シーズンの現実が突き付けられたといっていいだろう。勝てない。わかってはいたけれど、勝てない。

ただ。冒頭で「移籍した選手がいる一方で、残った選手もいる」と書いたけれど、それはアロともも同じなのだ。なので、残ったアロともに必然的に一体感が生まれやすくなったのかもしれない。

そして…これは個人的な印象(そればかり!)なのだが…
昨シーズンまでは、どこか放っておいても勝つ、部分があった。もちろんハラハラする、心臓に悪い試合ばかりで楽に勝った試合なんてなかったけれど、でも、基本的に勝っていた。そして何より、ここ数シーズンは声を出しての応援もできなかったから、なおさら、ファンが背中を押す、という本当の意味での応援、ができなかった。それが放っておいても勝つ、という感覚になったのではないか。でも、今シーズンはそうではなかった。

なかなか勝てへんのなら、ウチらもなんとかせな!

とはいえ何もそれはアロともが勝手にやったのではなく、選手たちがあきらめず奮闘していたから、自然とそうなっていった。選手の奮闘が波及していったと言った方が正しいか。

しかもただの奮闘ではなく、頭を抱えながらの奮闘…そう、前述した関選手の状態が、自然とアロともたちの心に火をつけていったのだ、と思う。

2月の黒部大会でのことだ。相手は無敗のJT。これは厳しい戦いになる…と覚悟していたものの、二セットを先取されたとはいえコート上にいる選手たちからあきらめの表情は見えず、コート上では声も響いて、選手たちは必死に食らいついていた。ふと、アリーナの反対側にいた知人を探すと、いつの間にかいなくなっていた。

ということは…と団席に目をやると、アロとも数人が結集して、即席の応援団を結成していた。正規の応援団は不在なので当然音響もない。そこで、あるアロともがいわば団長として仕切って、声援を統一し始めた。アロとも応援団、と言えばいいだろうか。

選手たちが必死に食らいついているのなら、オレたちも食らいつくぞ。コートでは戦力的に圧倒される中で、立ち向かっている。だったら客席も、相手の音響あり&私設応援団のチャントで圧倒される中、立ち向かわなければ…

やられっぱなしじゃいられへんわ!

いわば、アロじょとアロともの思いが、コートと客席、選手とファンという立場を超えて一つになった。

試合は負けたが、即席の応援団が結成された第三セットは奪い返した。第三セットから誕生したアロとも応援団の結成と決して無関係ではなかった、と現地で見ていた身として言い切れる

アロともって、いいなあ…

そんな光景を見てふと思う一方で、こんな思いも芽生えてきた。オレはアロともと言えるのか? ここからは少しだけ、私の話になる。