風の谷の東レアローズ第四章

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

ベンチに近い特別指定席は何も撮影席じゃない(私が勝ってにそう思っていただけなのだが)。どこかチームの一員となって、選手を間近に応援できる席なんだ(私の両隣の人も写真は撮らずに見ていた)。ごくごく当たり前のことなんだけれどそう気づいた。

この日は特別指定席、しかも東レ側だったので、撮りたいと思っていたけれどコートが逆だったり、お客さんが映り込んだりで撮れなかった写真がたくさん撮れた。例えばこの入場シーン。

いろんなチームの写真を撮っているうちに、入場方法もさまざまなことに気づいた。例えば日立は選手たちが荷物抱えながらスタッフ達と一緒に入ってくる。出社風景にも見えてしまった。でも久光や東レは、スタッフが先に荷物を運び込んでいて、そして監督もスタッフも先にコートに出ていて、選手たちが走りながら入ってくる。おそらくなんだけれど、試合前のロッカールームは選手たちだけにしておこうという配慮だと思う。

さらに東レは応援団と連動していて、入ってくると同時にファンファーレが鳴る。こういうのは他の会場でも見られるけど、やっぱりホーム・ウカルちゃんアリーナで見るのは特別だ。

今回の滋賀大会は土曜の一試合なので観客も少なめだった。特別指定席の中でもかなりいい席が取れたのもそのせい(ライバルが少なかった)だったと思う。出待ちも12月に比べれば少なかった。ただ、その分というか、滋賀大会ならではの、子供の多さは今回さらに際立っていた。応援団が多少音頭は取っていたと思うけれど、子供達から自発的に東レコールが起こったのは何とも言えない、素敵な光景だった。

肝心の試合だが、東レはこの日は絶好調で、25-21、25-17と早々に2セットを取ってしまった。ところが、これを維持できないのが今シーズンの東レというべきか、第三セットはいきなり0-6と大量リードを奪われ、14-25とあっさり奪われる。3ポイントを獲得するには落とすわけにはいかない第四セット。東地区首位通過のかかる埼玉上尾も必死で食らいついてきたが、なんとか東レが振り切った。

なんとか3ポイントを取らねばと考えていた私にとっても非常に見応えのある試合で、勝った瞬間は本当に心の中でガッツポーズした。岡山はこれより前に行われていたデンソー戦をまたしてもストレートであっさりと下し、試合数を1試合多く残しながら1ポイント差につけていただけに、ここで再び4ポイント差をつけられたことは大きかった。

ホーム・ウカルちゃんアリーナでこの東レアローズを後押しできてよかった。私も特別指定席で写真を撮りながらも、ベンチに戻ってくる選手を拍手で迎えたり、ポイントを決めたときは叫んだり、本当に少しだけれど後押しできたのではないだろうか。何よりこのウカルちゃんアリーナにいたことだけでも大きかったのではと思う。

本来ならこれでレギュラーラウンドの試合観戦はこれで終わりだった。基本的に私は飛行機を使う遠征はしないことにしているし(苦手なのもあるけれど、そこまでガチになってはいけないという自省もありつつ)、というより何せ1月は黒部と岡山、2月も既に神戸、滋賀と見ていて、遠征費がかさみ続けていた。そして何より、皇后杯準決勝と決勝を見た身としては、リーグ戦よりこういう一発勝負の緊張感のある短期決戦の方をもっと見たいと思うようになった。リーグ戦よりファイナル8に注力したい。そう思っていた。

ところが。神戸大会の結果で、ファイナル8進出が愛媛に持ち越しとなったとわかってから、私は自然と松山への航空券を探していた。この、今の、東レアローズをもっと見たい。そう思ったからだと思う。