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ポイント①決算公告にも載る「ソーシャル事業」

この記事を書くにあたり、母体のプレステージインターナショナルをいろいろ調べていたのですが、個人的にびっくりしたのが、企業としての業績説明などにアランマーレのことが多く載っていること、です。また、会場で配られている選手紹介のパンフも、企業案内にだいぶページを割いています。

サイトで公開されている、企業としては重要な資料である通期決算説明資料の2023年3月期(要は年間報告書)には、冒頭のエグゼクティブサマリーで挙げられている三項目で「営業利益10期連続増益」「配当」に続いて「女子バレーボールチーム アランマーレ山形V1昇格」とあります。

冒頭でいきなり紹介されていること、が何よりこのチームを象徴しているのではないでしょうか。

ちなみにサッと見ましたが、久光製薬は2023年の第一四半期の決算説明会資料には、リーグ優勝とサロンパスアリーナがセットで、2023年2月期第3四半期の振り返りの四番目に紹介されていましたが、昨シーズン優勝のNECは触れられていませんでした(プレスリリースも出ていません)。ちなみに私は東レの株主なので定期的に報告書が届きますが、バレーボールチームについては今まで一度も触れられていません(優勝してないから、というのもありますが…泣)。

冒頭にも書きましたが、プレステージインターナショナルの売り上げは545億(2023年3月期)で、久光(1201億※2022年度)やPFU(1345億※同)の半分ですし、一方NECは3.3兆(同)、東レは2.5兆(同)ですから、そりゃ、母体の企業規模が違うんだから(載る・載らないは)当然だよ、ということになりますが、にしても。だって、決算資料など会社のリリースに載るかどうかは、企業におけるチームの存在価値のバロメーターじゃないですか。

存在価値という点ではさらに言うと、プレステージインターナショナルのすごいところは、アランマーレというスポーツチームを「ソーシャル事業」という事業区分にしているんですよね。他に「オートモーティブ」「プロパティ」等々全部で7事業あるのですが、その一つになっています。

そして企業のホームページにもソーシャル事業のページで『女性応援のシンボルとなるチームを目指す「アランマーレ」』として紹介されています。

ソーシャル事業 - 株式会社プレステージ・インターナショナル

事業として位置づけられるということはどういうことか。要は採算をちゃんと管理・監視しているということです。とはいえ、全体の事業に占める売り上げは1%ではあるのですが。そして唯一の赤字事業です。ただ、「スポーツ事業はスポンサー及び観客動員数増加により増収」とありますし、実際売上も、営業利益も右肩上がりなんですね(載っているのはコロナ禍以降の数字だけなので、元に戻っているだけかもしれませんが)。

恐らくですが、スポーツ事業単体、そしてバレーボールチーム単体ではないとはいえ、V1~V3の女子チームの中で唯一、売上等実態の把握しやすい数字が公表されているチームじゃないですかね(プロチームなら官報などで決算公告は見られるかもしれませんが…簡単ではないです)。

従来の、いわゆる実業団形式だと、チームは企業の一部門に過ぎなかったと思います。であればそういう企業のリリースに情報が載ることはない。でも、アランマーレのような一事業、になるのが今後SVリーグを通してバレーボールがもっと活性化されていく大事なことなのでは、と。さらに言えば久光のように独立した企業体になってより収支が厳しく見られる、ということが大事だと思います(PFUも関連会社に移管しましたし)。

ちなみにですが、ソーシャル事業の2023年3月期の決算は6.6億なので、SVリーグの条件(2026/27~)の6億を満たしています。もちろんバレーボール単体ではないのですが、ソーシャル事業の主体をバレーボールにして、その関連事業としてバスケやハンドボールの他チームを組み込む形にすれば問題はないのではと思います。

そして。
12月にホームゲームが山形ではなく一関で開催されたのは、前述のとおり酒田の体育館が改修中で使えないというのもあると思いますが、間違いなくこれが理由だと思います。

これは一ノ関駅構内で見かけたのですが、今回の一関大会はいわばプレステージインターナショナルとしての一関市民への挨拶でもあり、一方では一関市としてセンター開設の御礼も兼ねていたのかなと思います(雇用が生まれるのですから)。実際、日曜は一関市長が挨拶してましたし、この件について触れていました。

母体企業の事業とチームが比較的リンクしているという印象ですが、それはやはりソーシャル事業として明確に位置づけられているからではないでしょうか。チームは、たいていは社会貢献とかそっちの方にカテゴライズされてしまいますから。

ただ、SVになるとこういう事業化ってより求められるので、このアランマーレのあり方はこれからのVリーグの一つのモデルケースでは…と思った次第です。簡単に言うと、事業として数字を即答できるかどうか、すぐに見られるようになっているか、ということです。

※少し脱線しますが、一関大会はお客さんも少なかったですが、もし一関からの誘致(支援金等)とすれば、それで採算が取れている可能性はあります。野球とかでも地方興行があるのと同じですね。つまり観客数(収入)だけが全てではない、ということはお伝えしたいです。

って、いきなり堅い話になりましたね。次は拠点を置く庄内地域について。