選手の退団で着手した攻撃パターンの抜本的改革
サマーリーグ以降、東レアローズを見る中で、そしていろんな人と話して感じたのは「チームが抜本的に変わる」ということです。根本ではなく抜本。根っこを変えるのではなく木を抜くくらいの改革。例えをいろいろ考えた中で一番わかりやすいかな、と思ったのが、スマートフォンでいえば今まではiPhoneを使い続けて、iOSをアップデートしたり機種変したりして使い続けていたけれど、androidに乗り換えることにした、というもの。つまりOS(オペレーションシステム)自体を切り替えた。
私自身もiPhoneからandroidに乗り換えた経験がありますが、ちょっとした操作性が違うし、LINEの引継ぎも手間なんですね。なので普通は同じOSを使い続けると思うのですが、その手間を上回るメリットがあるから替える。そういうことでしょう。
その切り替えについて、内側(選手)においてそれが一番わかりやすいと思うのが、ブロード攻撃です。私が本格的に東レアローズを追いかけ始めたのが2018/19シーズン。そしてそのときに推しが小川愛里奈選手になったこともあって、ブロードのある東レアローズ、という光景がいわば当たり前になっていたわけです。
ただ、今の東レアローズにはあのようなブロード攻撃はもうありません。井上奈々朱選手が復活したら見られるかもしれませんが、攻撃パターンにおいてはメインではなくあくまでオプションの一つにとどまると思います(小川選手の決定力にはかないませんから)。
以下、表を使って説明します。とはいえ素人目線のため的外れなことを言っていると思います。それを含めての素人目線ということでご了承ください。
今までの東レアローズの、サーブレシーブ時の攻撃パターンの一つはこれでした。
レフトから石川、はたまたバックアタックでクラン、そしてブロードで小川。ただ、サーブのいいチームの場合、なかなかセッターにAパスが返せない。となると、ブロードもバックアタックも封じられ、レフト一辺倒になります。
でも、これが成立するのは石川真佑、クラン・ヤナ両選手という強力なレフトがいたから成立した陣形。両選手がいなくなり、そして小川選手もいなくなったことで、ブロード前提の攻撃パターンが組めなくなったわけです。そこでブロードをいわば「捨てた」フォーメーションに切り替えたわけです。
相手のサーブに圧倒されて崩されてAパスが返せなくても、MBはブロードに比べればクイックには対応できますし、はじめからライトに開いておけばライトからの攻撃も可能。
これって何かに似てませんか…?
そう、代表です(上記の場合、荒木彩花選手はライトからも攻撃できます)。そして何よりのメリットは、関選手が代表から戻ってきても、基本的な攻撃パターンが代表と変わらないので短期間でチームに馴染めるということです。
そして、これはよく言われる「男子化」とも言えるんですかね。このあたりは素人なので解説できる力を持ち合わせていないのですが。
ただ、言うまでもなく東レは男子チームがありますし、越谷監督や鈴木コーチのように男子の東レアローズ出身者もいるので、男子化という点では他チームよりそれが導入しやすい側面はあるのではと思います。ある意味男子チームのある東レの長所を最大限に生かすといいますか。
そして何より、これをまとめるにあたって気になっていたことがあります。といいますのも、皇后杯決勝でもリーグファイナルでも、ブロードが機能していなかったんですよね。共に相手がサーブ効果率一位のNECだったということもあるのですが、サーブで崩されて攻撃の形をなかなか作れなかったんです。
なので、東レとしてはそこを踏まえて、ブロードを捨て、攻撃を抜本的に改革するという選択を取った。と言えればカッコいいけれど、実際は先ほど申し上げた通り石川、クラン、小川各選手がいなくなったのでそうせざるを得なくなった、ということでしょう。
そして小川選手が、ブロードができる機会が増え、サーブレシーブ成功率が18/19シーズン以降常に東レより高いJTマーヴェラスに移籍するのは必然と言えるのではと思います。しかもウチはサーブレシーブのいい石川選手も抜けますし。そしてなにせJTは吉原監督ですから、ブロードのない男子化を志向することもないでしょう。
ただ、チームによっては代表の方向性を志向する、合わせるという選択もあると思うのですが、代表は今回島村春世選手、そして小川選手がA代表に入らなかったことからわかるように、ブロードは攻撃パターンには入っていないんですよね。VNLを戦う中でブロードを捨てたのかもしれません(元々ブロードをする海外のチームは少ないですし)。
なので今回の東レアローズの抜本的な改革は、代表の方向性に合わせたともいえます。もっともこのあたりの戦略トレンドは変化するので、ブロード回帰になる可能性もありますけどね。
少し、話が長くなりました。
ただ、この東レの攻撃の方向性、志向性と、それに小川選手の長所がマッチングしなくなったことを考えると今回の小川選手の移籍はこれでよかった、と思いました。相互納得の上の、俗にいう円満退社、ですね。私もようやく吹っ切れました(笑)。ご自身がより活きる新天地で頑張ってほしいと思います。
続いては外側(運営体制等)についての話です。