石川選手の投入もあり、東レは第三セットをリードしていた。ここで一セット取って反撃に…という期待が芽生えたのだが、一セットすら取らせないという久光の本気が勝り、結局デュースには持ち込んだけれど東レは敗れてしまった。
完敗。
これ以上でもこれ以下でもない。
VOMには新鍋選手が輝き、試合前に思い描いていた「0-3で新鍋様に一蹴されてもいい」は予想通りになった。やった!予想的中!
…なわけない。ただ、東レはいつも本気にならないと勝てないというのはシーズンを通して感じていたことだ。尻に火がつかないとダメ。なので試合後たまたま応援団長に会ったときに「これでウチの勝ちパターンに持ち込みましたね!」と話したけれどそれはまんざら間違いではない。
ファイナル3もそうやって勝ち上がってきたのだから。
試合後、出待ちしているファンの方と話したのだが、「久光はこの日に合わせてシーズンを戦っているわけだからね」と言われてハッとした。そう、久光はこの日、名古屋にいる=ファイナルに進出することを大前提として今シーズンを戦ってきたわけだ。チームはどうかわからないけれど、私自身、ファイナルどころかファイナル3にいることすら想定せずに来ていた。
チームはどうかわからないけれど、この舞台に立てているなんて、という思いは少なからずあったのかもしれない。それは全然悪いことじゃない。むしろファイナルが一試合でよかったなと思った。ふわふわしたまま試合が終わってしまったらこちらもやり切れない。
なので、来週に向けた予行演習ができた。そんな感じだった。
ただ。
私が見ていた席は控えエリアに近かったんだけれど、白井美沙紀選手を始めとした控え選手たちの雰囲気はいつものままだった。そして堀川キャプテンはいつものように大声を出していた。
その空気だけは失ってなかった。
帰りの新幹線。いつもの通り写真をスマホに転送しながらビールを飲んでいた。
その足取りはどこか軽かった。新鍋様に蹴られたからではない。
一つは、ファイナルだけあって日本のバレーボール界最高峰の試合が見られたということ。今にしても思えば選手たちを光り輝かせる照明の演出もあったけれど、特に久光のプレーからは最高峰のプレーというのが感じられた。そういう試合を目の前で見ているというのはシアワセだった。
ただ、何よりも…
それは、来るときに感じていた重さが、これから登ろうとしてる山、越えようとしている壁が高いからと感じていたからなのだと。ただ、その高さが今日はっきりとわかった。だから、スッキリとしたのだろう。
今日負けて逆風なんだけれど、逆風も、体を180度回転すれば追い風になるのだ。
風は、吹いている。