逆風の谷の東レアローズ

東レアローズ滋賀
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

話を戻す。

これがファイナルなのか…私自身初めてのファイナルで、見る物が新鮮だった。新鮮といえば入場方式もそうで、DJ主導の下、選手たちがスモークをたかれる演出の中入場してきた。いつものように選手たちが全力で走って入ってきて、東レ応援団がファンファーレを鳴らす…というのがなかった。照明はこれまでの会場とはまた違って、コートを明るく照らしていた。選手たちがまぶしく見えた。入場時の演出では暗転していた場内がパッと明るくなって選手たちがまぶしそうな表情をしたのが印象的だった。

これがファイナルの舞台なのか…

今にして思えば、選手たちもこの感覚だったのではと思う。何もかもが今までとは全く違う。どこかふわふわとした気持ちになってしまう。思えば私は12月に皇后杯決勝を生で見ていた(これも初めてだった)のでなるほど、多少の既視感はあったんだけれど、そして久光はファイナルの舞台も、そして皇后杯決勝も経験していていわば決勝慣れしているんだけれど、東レにそれは全くなかった。

ものすごく簡単にいうとこの差が出た第一戦、だった。

試合を撮りながら見ていて感じたのは、いつもはできていたいろんなことがことごとくできていなかった、ということだった。それはもしかしたら息の合わなさ、とか、ふわふわしていたとかそういうことなのかなと思う。誰かがダメということではなく、みんなが少しずつずれていったというところだろうか。久光は怖いくらいいつも通りだった。岩坂がブロックしアキンラディオが躍動し、石井が決め最後は新鍋が蹴り落とす…スポーツニュースでテンプレで使えるくらい誰でも書け、何度でも使えるこの文章(いや、新鍋が蹴り落とすなんてニュースでは言わないが…)。いつも通りだった。

ただ。東レはいつも通りだったら勝てた、なんて思わない。いつも通りやっても負ける、それが久光だ。だってシーズンで一勝もしていないのだから。いつも通りにやる、プラスアルファがないと勝てない。だから、今目の前に立ちはだかっている壁ってめちゃくちゃでかいんだなと。

試合中には関選手が下げられてしまったけれど、これも最近では珍しい光景だった。少しクールダウンして冷静に。そんな配慮だったのだろう。私の席からはちょっと遠かったんだけれど、すぐに中道さんが声をかけに行ったのが東レらしい光景だなあと思った。

あとは試合中で投入した石川真佑選手はとてもよくてチームを活性化させた。この試合はどの選手も調子がよくなかったんだけれど、唯一よかったのは彼女くらいじゃないだろうか。

これだけは、来週の本当のファイナルの好材料だと思った。