KUROBEアクアフェアリーズ PFU戦第四セット前の3分間

KUROBEアクアフェアリーズ
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

特に印象に残ったのは浮島選手だった。私はよくわからないんだけれど、移籍NG(と聞かされている)な久光からの移籍というのはとても珍しいのではと思う。理由はわからないけれど、間違いなく言えるのは久光にいるよりはKUROBEにいた方が活躍の機会が圧倒的に増えるだろう。彼女にとってはKUROBEは本当の意味での新天地なのだろう。

そして第四セット、24-18で迎えたマッチポイント。その最後を決めたのが浮島選手だったのも、KUROBEらしかった。

スパイクが決まり、勝利=V1残留が確定した瞬間、スパイクを打った浮島選手は精根尽き果てたという感じで立てなかった。勝った喜びというよりは残留確定の安堵感だったのか。そして選手たちの歓喜がコート上に弾けていた。

それで気づいた。試合前練習とかで感じた、いつもの雰囲気は、もしかしたら選手たちが一生懸命「いつも」を装っていたのかもしれないなと。本当は不安が押し寄せていたけれど、それを押し隠していた。全てが終わった瞬間、押しとどめていたものが外れ、怒濤のように感情があふれ出てきた。

ふと、対岸のPFUを見ると、PFUの選手たちが泣き崩れていた。彼女たちも「いつも」を装っていた。というより、シーズン全敗のいつもではなく、シーズンとは違う自分を装っていたのかもしれない。

こういう大一番は、勝ち負けどちらのチームも試合後に押しとどめていた感情が爆発するのだな…

試合後のインタビューで丸山キャプテンの話が印象的だった。初めて参入したV1で不安がたくさんあった…と。冒頭に紹介したブログでも書いたけれど、KUROBEはこれまでV1参入経験がなく、手探りなシーズンを過ごしてきたわけだ。初めて行く土地も多かったし、対戦相手はほとんどが初対戦だったはずだ。勝てるのか、とか、降格してしまうのでは、とか。そんな不安も多かっただろう。

KUROBEは今シーズンいろんなものを抱え、戦っていたんだなあとつくづく感じた。そしてこの試合での残留確定はイコール、KUROBEの最終戦になったことを意味していた。

いわば有終の美。試合後の選手たちからはどこか充実感も伝わってきた。

それは何も今季を戦い終えたこと、だけでなく、KUROBEという一地方のチームでもV1の舞台で戦えること。そしてこれからさらに上に行けるぞという自信。

それは何も戦力的な強さ、ではない。選手たちの一体感。そして監督(花巻での岡山戦の翌日、チャレンジマッチ対策のためにV2のファイナル6を視察に行ったらしい)、スタッフ(竹中トレーナーのキャラは本当に面白い)やスポンサーなど、KUROBEアクアフェアリーズ全てを取り巻く一体感。

丸山キャプテンの表情がそれを何より物語っていたと私は思う。