KUROBEアクアフェアリーズ PFU戦第四セット前の3分間

KUROBEアクアフェアリーズ
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

ここからは、完全な想像による話だ。

タイムアイトの円陣で選手たちで何かを話していたのだが、アールブレヒト選手が切り上げて、一人コート側のラインに戻って行ってしまった。集中したかったのかもしれない。一人にして欲しかったのかもしれない。

すると、控え選手だった綿引選手が、アールブレヒト選手のところに寄っていって何かを話していた。みんないるんだから、円陣に戻ろうよ。そんなことを話したのではないだろうか。アールブレヒト選手は綿引選手を抱きしめた。あなたの言うとおりだ。ありがとう。そんなことを言ったのではないだろうか。

こうして選手たちは再び一つになり、円陣を組んだ。

円陣に戻ろうよと言ったのかはわからない。ただ、間近で見ていてアールブレヒト選手が、どこか一人にさせて、みたいな感じで輪から離れていった印象を受けた。でも、それを呼び戻そうとする選手がいる。

これは、私の中でのKUROBEアクアフェアリーズらしい光景、だ。

V1に初めて参入してきたKUROBE。そもそも戦えるのか、という不安はたくさんあったと思う。そんな中、PFUを上回り9ポイントを重ねて5位に入ったというのは選手たちにも自信になったシーズンだったと思う。そんな中、私はアールブレヒト選手の存在がとても大きかったと思う。いわば親分肌とでも言おうか。ベルギー代表で実績もそれなりにある選手が、若い選手たちに自信を与え、大声を出して鼓舞していった。そんな存在だと思った。

これは別の試合でDAZNの矢田部さんの実況で知ったのだが、オフを利用して埼玉上尾のシュシュニャル選手と都内で食事したとか。「他のチームの外国人選手たちと交流を図っています」と矢田部さんは言っていたけれどまさにそうだと思った。そういえば1月の黒部大会ではシュシュニャル選手と試合後に抱き合っていた。花巻では日立の試合中に突然やってきて、登録外選手として座っていたヘイルマン選手と抱き合う光景が見られた。

KUROBEだけでなく、日本にいる他のチームの外国人選手たちの親分。アールブレヒト選手はそんな存在だ。だからKUROBEがどういう理由で彼女を獲得したのかはわからないけれど、予算も限られる中で獲得した外国人選手としてはまさにKUROBEの弱点を埋め、かつチーム力もアップできる理想的な選手だったと言える。

遠いベルギーからわざわざ日本に、しかも黒部というこういっちゃなんだが田舎町にやってきてけっこう大変だとは思うのだが、こうしてチームの中心的な支柱になっているのはVリーグファンとしてうれしい。せっかくVリーグに来ていただいたのだから日本で活躍しい欲しいからだ。

PFUの江畑選手のように、代表経験がある選手が一人でもいるというのは精神的な支柱になると思う。でもKUROBEには全日本の選手は(何らかの理由があって)獲れない。だったら他の国の代表選手を…そういうことなのかもしれない。

こうして始まった第四セット。第三セットで完全に流れを失い、PFUはそれを取り戻せなかった。ポイントを重ねるたびに、残留確定へのカウントダウンが始まっていった。25ポイントまであと5点、4点…